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「······今、勝手に達したでしょ。本当に葵は悪い子だ」 「······ご、め······っ、な······」 「「おかーさま、どーしたの?」」 タッタッと、軽い足音が二重に聞こえたかと思えば、二人がやって来ていた。 二人に背を向ける格好になっているとはいえ、こんな顔を見せられない。 震える手で碧人の着物を掴んでいると、碧人が口を開いた。 「お母さまは疲れていてね。具合が悪そうなんだ」 「おねつー?」 「おとーさま、おしごとはー?」 「お仕事はちょっとお休み。お父さまが寝かせてくるから、心配しないで」 そう二人に優しく声を掛け、抱えながら立ち上がった後、「······鳥籠行きだ」と地を這うような、独り言にも似た声が聞こえ、葵人は腕の中で小さく震えた。 自分に言われたのかと一瞬思ったが、恐らく、自分らの元に来てしまった、新と真を引き止められなかった使用人に対して言ったのかもしれない。 現に聞こえたらしい使用人が、慌てた様子で二人を連れて行こうとする声が、踵を返し、普段いる部屋に来、二人の声とも遮るようにさっさと閉めた障子越しに聞こえたから。 畳に横たわる形となった葵人は、冷めない熱に浮かされたまま、駄々こねる二人の声と、何も言わず、畳を踏みしめる夫の足音をぼんやりと聞いていた。 「······これがもしかして、僕に編んだマフラー?」 その声に反応するかのように、顔だけを向けると、マフラーを手に取っていた。 「初めてにしては出来ているね。とても愛らしい出来具合だ」 そう言って、とても嬉しそうに自身の首元に巻いていた。 新と真の時もそうだが、三人とも嘘偽りがなく、本当に嬉しそうにしてくれるから、編んで良かったと心底思う。 「新の時、真の時と、あげる人のことを想いながら編んでいたのだから、僕の時もきっとそうなんだよね」 こちらに来て、葵人の前で膝を着いた。 そして、手を伸ばされた時、お仕置きをされると思った葵人は、期待もありながらも、恐怖をも滲ませ、体をビクつかせた。 そんな葵人のことを気にしている様子はなく、頬を触ってきた。 「葵は誰にでも優しいから、等しく愛情を向けてくれる。それはいいこと。いいことだけど、それを僕は赦せないんだよ······?」 「······っ」

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