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第62話
朝霧は困惑した表情を浮かべた。
「何で、俺なんだ? 俺なんてただの冴えないおっさんじゃないか」
夏川は苦笑して、朝霧の頬にそっと触れた。
「帝は魅力的だよ。もっと自信もってもいいくらい。俺、帝の見た目も中身も大好き。恋愛ってするものじゃなく落ちるものなんだって、帝に出会って、初めて知った」
照れたように笑いながら言う夏川を朝霧はじっと見つめた。
自分にそんなことを言ってもらう価値があるのか。
朝霧は未だ自分に自信がなかったが、夏川の笑顔を見つめていると、胸の奥が温かくなる気がした。
「そもそも俺、仕事以上に重要な存在に出会ったことがなかったけど、帝のためなら、多少仕事無理しても週末に休んで会いたいって思えたし」
「俺、リョウの仕事の邪魔になってる? 」
あまり重いと嫌われると言われた渡会の言葉を思い出し、朝霧は眉を寄せた。
そんな朝霧の言動が可愛くて仕方のない夏川は、衝動的に朝霧を強く抱きしめた。
「邪魔じゃない。帝は俺のやる気の源だって言ってるの」
夏川は朝霧の鼻先にキスを落とすと、甘い笑みを浮かべた。
「ねえ、帝。いつも俺、聞くじゃない? 帝にどんな風に抱いて欲しいかって」
朝霧が頷く。
「でも今日はさ、俺の好きなように抱いていい? 」
朝霧は今度は顔を赤くして、頷いた。
そんな朝霧に夏川は微笑みかけると、その体を抱き上げた。
寝室に連れて行き、朝霧をそっとベッドに降ろすと、夏川は丁寧に朝霧の衣服を脱がし、全裸にした。
夏川は自分もさっさと脱ぐと、下着だけの姿で、朝霧に覆いかぶさる。
朝霧の手を取ると、夏川はその手の甲にキスをした。
「帝。今日はお姫様みたいに丁寧に帝を抱かせて。俺が帝のことをどれだけ愛しているか感じて欲しいんだ」
朝霧は涙に潤んだ瞳で夏川を見上げると、両手を伸ばした。
「うん、俺のことめいっぱい愛して」
夏川は微笑むと、朝霧に口づけた。
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