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瞳、奪われる。2

 わあ、何だよ、これ。  そんな自分の反応に、夏川はヒュっと息を飲んだ。  それでも男が振り返った時に、夏川は何とか余裕のある笑みを浮かべることができた。 「お兄さん、飲んでる? 」  グラスをあわせようとして、男に拒否された時、夏川は珍しくぽかんとした表情になってしまった。  男女問わず、彼が笑顔をむければ、大抵はむこうも夏川に媚びるような笑みを浮かべるのがほとんどだったからだ。  もしかしてこの人、この店に通っているだけで俺と同じ様にゲイじゃない?  それにしても俺に対する態度が酷すぎだけど。  夏川は拒まれると余計に燃えるタイプだった。  自分を拒絶する男の隣に座ると、夏川はカクテルを頼んだ。  男がこちらをちらとも見ないのをいいことに、夏川は男をじっくりと眺めた。  男は髪の毛を明るい色に染めていたが、びっしり生えそろった長いまつ毛は漆黒だった。  男の地毛はきっとカラスの羽の色みたいなんだろうと夏川は推測した。  いいな。この人の白い肌に、黒い髪は映えるだろう。  それで頬をちょっと赤く染めた感じなんて、もう最高に好み。  それにしても幾つくらいの人なんだろ。  年下ではなさそうだけど、同年代かな。  そう推測していた夏川は朝霧本人から年齢を聞いて、驚愕することになった。  嘘だろ。  だってこの人、こんなにも可愛い。  むきになってつっかかる朝霧が可愛くて仕方なく、夏川はわざと喧嘩を売る様な態度をとった。  どうしても自分のモノにしたくて、我慢ができずに、気がついたら夏川は朝霧に手を伸ばしていた。  夏川が朝霧に触れた瞬間、背後から声をかけられ、思わず舌打ちしそうになる。  仲間の輪の中に戻っても、夏川の視線は朝霧の濡れた背中に釘付けだった。  押し倒して、あの濡れたシャツを引き裂いて、体中に口づけて、痕が残るほどあの肌に吸いつきたい。  夏川の脳内では、朝霧は既に裸で、白濁に塗れていた。

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