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私から見た彼らは4
ノンケではなかったのか。
それともよほど誘ってきた男が気に入ったのか。
会計を行う夏川の横で笑顔で待っている男は、確かにそれなりに可愛い顔をしていたが、ずば抜けて人目を惹くタイプではなかった。
そんな2人を見送りながら、猪塚は内心頭を抱えた。
夏川が男に目覚めて、この店で色々な男に手をだすようになったらどうしよう。
夏川の誘いを断るようなゲイはほとんどいないだろう。
猪塚だって、金を払ってでも一晩お相手をお願いしたいような顔と体を夏川は持っていた。
とにかく、店内で修羅場だけは止めてちょうだいよね。
そんな猪塚のささやかな願いは、叶わなかった。
ワインを飲みながら、猪塚は隣をちらと見た。
ソースのついた朝霧の口角を夏川が手を伸ばして、拭ってやっている。
頬を染めて礼を言う朝霧を、夏川は甘い笑みを浮かべて見つめていた。
そんな2人を見れば、結局あの時呼び止めなかったのは正解だったのだろうと猪塚は思った。
朝霧が夏川と初対面の時に必要以上にぶっきらぼうに対応しているのを見て、彼を意識していることまでは猪塚は把握した。
でも考えてみれば、まずは夏川が、この店で自分から声をかけた男は、朝霧が初めてだった。
肉食系に見える夏川だが、容姿とその堂々とした雰囲気のおかげで、今までセックスの相手には困らなかったであろうことは、猪塚にも容易に想像がついた。
自分からいかなくても、相手から入れ食い状態。
男女問わず夏川が自分から声をかけるのは、もしかしたら珍しいことなのかもしれない。
そんなことを考えていると、ふいに猪塚の隣の小さな頭が揺れた。
酔ったのか、朝霧は少し赤い顔でグラスを傾けていた。
ふいに朝霧の綺麗な瞳と目が合ってしまい、猪塚は慌てた。
「このローストビーフ、本当に美味しい。これもリョウが作ったの? 」
妙に甲高い声が猪塚から漏れる。
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