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私から見た彼らは9
「飲み過ぎたみたい。そろそろお暇するわ」
「たいしたお構いもできませんで」
夏川と猪塚は立ち上がった。
玄関で、猪塚が振り返った。
「さっきの話、腹が立ったのも事実よ。でも同時にすごく意外で私、驚いたの。リョウはそんなに面倒なことをしてまで、誰かを手に入れたいと思う人間じゃないと思っていたわ」
猪塚の言葉に夏川がにこっと笑う。
「心底、帝に惚れているんだよ」
「今夜はそういうことにしておいてあげる。でも本気でみっちゃんを傷つけたら、許さないからね」
夏川の目の前で扉が閉じる。
「傷つけるなんてするわけない。馬鹿な元カレと同じ轍を、俺が踏むわけないじゃないか」
夏川はそう呟くと、踵を返した。
朝霧は喉の渇きで目を覚ますと、起き上がった。
リビングに顔をだすと、キッチンで夏川が洗い物をしている。
「帝、起きたの? 」
気付いた夏川に微笑みかけられる。
「うん、何か喉乾いちゃって」
夏川はさっと冷蔵庫を開けると、ミネラルウォーターを入れたグラスを朝霧に手渡す。
「ありがとう。マスターは? 」
水を飲み干し、朝霧は息を吐いた。
「もう帰ったよ」
「そっか。途中で寝ちゃって悪いことしたな。片付けもリョウ1人でさせてごめん」
俯く朝霧の髪に、夏川はキスを落とした。
「いいんだよ。それより帝。気分は悪くない? 結構飲んでたみたいだけど」
「大丈夫。少し眠らせてもらったおかげかな。吐き気も頭痛もないよ」
「それは良かった」
夏川がこつりと自分の額と朝霧の額を合わせる。
目を合わせ、唇が重なる。
「んっ…ん、ふぅ」
濃厚なキスをしながら、夏川は朝霧のセーターの中に手を入れる。
柔らかい乳輪の感触を夏川は指先で楽しんだ。
「あっ、あっ、んっ、はあっ」
ふいに硬くなった乳首を摘ままれ、朝霧が甲高い声をあげる。
夏川は興奮したように息を荒げると、朝霧の着ていたものを全て脱がせた。
「帝、机の上に乗って」
「ここでか? 」
夏川の家のいたるところで、2人はセックスをしてきたが、明かりが煌々と点いているリビングで自分の裸体を晒すのが、朝霧は恥ずかしかった。
そんな朝霧の唇に夏川が音をたてて、口づける。
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