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第71話

「分かってるよ。それに俺も変かもしれないけれど、リョウにそう言ってもらえるのちょっと嬉しいし」 「帝」  感極まったように夏川は朝霧に口づけた。  その口づけを受けながら、幸せすぎて怖いくらいだと朝霧は思った。    今晩の夕飯は、ロールキャベツと海老とブロッコリーのアヒージョ。かご一杯に斜め切りしたバケットも置いてある。  朝霧がバケットを持ってちぎると、それはまだほんのりと温かかった。 「美味しい? 」  アヒージョにバケットを浸して食べると、にんにくの風味が口内に広がる。  朝霧はすごい勢いでパンを食べながら、何度も頷いた。  途端に、夏川がため息をつく。 「そんなに俺の料理が好きなら、引っ越してくれば毎日でも食べられるのに」  朝霧はぴたりと動きを止めた。 「同棲はまだ早いだろ」 「早くないよ。俺達付き合ってからは三ヵ月だけど、セフレ期間入れたら10か月弱一緒にいるんだよ? そろそろ一緒に住もうよ」 「もう少し考えさせてくれ」 「またそれ」  夏川が不機嫌を隠さずに、はあと息を吐く。  慌てて朝霧は食べる手を止めた。 「リョウと住むのが嫌なわけじゃないんだ。でも俺、ここの家賃の半分も出せないし……」 「家賃は今いるところと同じ額で良いって言ってるじゃない」 「それじゃ、リョウにばっかり負担が」 「あのね、帝」  夏川が真っ直ぐ朝霧を見つめた。 「もちろん俺が帝と住みたいのは一緒に居たいからって理由が一番だよ。でもそれ以外に、帝の体調が本当に心配なんだ。帝、俺のところに来る日以外は食事も適当だし、睡眠も上手くとれてないだろ? 」  その通りだった朝霧は、俯くしかできなかった。 「責めてるわけじゃないよ。料理が苦手な帝に無理に自炊しろって言いたいわけでもない。俺はね、大好きな帝に少しでも健康で長生きして欲しいんだ。だからそのために帝と一緒に住んで、ご飯とか作れたら俺が安心するから提案しているんだけど」

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