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第77話

「リョウ、遅いよ。バーベキューの準備始めようと思っていたところ」  女性の1人が、軽く夏川を睨む。 「ごめん、ごめん。あっ、この人が朝霧帝さん。俺の可愛いパートナー」  朝霧は軽く頭を下げ、強ばった笑みを浮かべた。 「朝霧です。よろしく」 「真島猛(マジマ タケル)です。よろしく」  日焼けして、Tシャツから逞しい二の腕を覗かせている男が白い歯を覗かせながら自己紹介する。 「君塚 義則(キミヅカ ヨシノリ)です」  ひょろりと背が高く、眼鏡をかけた男が頭を下げる。  朝霧はその男に軽く頭を下げながら、気分が重くなるのを感じた。  君塚は一切、朝霧の方を見ようとしなかった。  人見知りなのかもしれないが、自分以外の人間とは楽しそうに話しているところを見ると、正直落ち込む。  もしかしたら彼はゲイに嫌悪感を持つタイプなのかもしれない。  そう考えると、早くも朝霧の胃がしくしくと痛んだ。 「遠田 裕子(トオダ ユウコ)です。リョウが綺麗な人だって、いつも帝さんのこと自慢するから、一度お会いしてみたかったんです。本当にリョウが自慢したくなるのも分かるわ」  遠田の言葉に、朝霧は頬を染め、首を振った。  遠田は黒髪のロングヘアの美人で、そんな人から綺麗と言われると、朝霧は身の置き場がなかった。 「確かに美人さんですよねー。朝霧さんって本当に男性なんですか? 」  遠田の隣の女性に不躾な質問をされ、朝霧は息を飲んだ。  女性はタンクトップからこぼれんばかりの乳を見せつけるように腕を組んでいる。 「あっ、山田 花(ヤマダ ハナ)って言います。よろしくー」  山田は朝霧を値踏みするように見つめるのをやめなかった。  その視線から、朝霧を隠すように、夏川がすっと立ち位置を変えた。 「帝がちょっと車酔いしちゃったんだ。部屋で休ませてあげたいんだけど、いいかな? 」

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