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第213話

 音羽は急に落ち着きがなくなり、視線を落とした。  さっきまでの堂々とした態度とはまるで別人のように朝霧の瞳には映った。 「別に……服を脱ぐ必要なんて」  ぶつぶつ言う音羽を夏川が視線だけで黙らせる。 「早くしろ。それとも無理やり脱がされたいのか」  夏川に冷たく言い放たれ、音羽は顔面蒼白になった。  震える手でズボンを降ろし、トランクス一枚となる。 「下着も脱げ」 「せめて電気を消してくれないか? 」 「嫌だね。早くしろ」  音羽は己の唇を噛みしめると、下着を脱ぎ、股間を手で覆った。 「手をどけろよ」  音羽がおずおずと手を離す。 「えっ」  朝霧は思わず声をあげてしまった。  音羽の性器はとても小さく、自分の小学校低学年の時だって、もう少し大きかったというサイズだった。 「ふぅん。それじゃあ確かに脱げないな」  夏川の笑みを含んだ言葉に音羽が顔を上げる。 「うるさいっ。僕はお前と違って、帝君と魂で繋がっているんだ。そんな汚らわしい行為をしなくても、僕達は愛し合えていた」 「愛し合ってなんかない」  朝霧は大きな声で音羽の意見を否定した。 「嫌がっている俺に無理やりバイブを入れたり、ベルトで殴ったり。……そんなの愛なんかじゃない。あんたは中学の時も、今も一度も俺を愛したことなんてない。ただの自分勝手な欲望で、俺のことを傷つけただけだ」 「帝君」  音羽が呆然と呟く。 「何が、魂で繋がっているだよ。あんたは勃起できないから、帝に入れられなかっただけだろ? その鬱憤を暴力で晴らしていた、DV野郎のくせに」  夏川の言葉に、音羽が俯く。 「自分にコンプレックスがあるから、言いなりになるまだ自我の育っていない子供を捕まえて、無理やり言うことを聞かせた。最低の大人だよ。あんた」  音羽はもう何も夏川に言い返しはしなかった。 「黙ってそこで座っていろ。本当に愛し合うってのが、どういうことか。お前に見せてやるよ」  夏川はそう言うと、朝霧の頤を掴み、口づけた。

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