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第4話 意地っ張り同士のふれあい(4)★
「先生っ」
橘が焦る気配を感じたけれど、ここにきて引き下がることなどできるものか――諒太は構わず喉の締まりで圧迫してやった。異物を押し戻そうと生理的な吐き気を催すも、粘膜を擦りつけて口淫を続ける。
「っ、それヤバ……」
「ん、ぐっ」
もう言葉を返す余裕もない。ただ奉仕に夢中になって、じゅぷじゅぷと水音を響かせた。
口腔内で橘のものがさらに膨張して、質量を増していくのがわかる。仕上げとばかりに先端をきつく締めあげれば、やがて熱いものが弾けた。
「――っ」
橘が身を震わせて大量の精液を放っていく。
諒太はむせそうになりつつもその全てを受け入れ、ごくりと音を立てて飲み込んだ。それから、ようやく口を離して言葉を紡ぐ。
「すげ……精液、濃いの出た」
喉の奥で絡みつく感じがして、何度か咳払いをしてやり過ごす。顔を上げると、橘が戸惑った様子でこちらを見ていた。
「すみません、俺――」
「いーよ、溜まってたんだろ? これですっきりしたか?」
「………………」
橘の顔が曇る。まだ自分の心情が整理できていないのだろう。
そんな彼に微笑んで、諒太は諭すように告げた。
「橘が俺のこと想ってくれてるの、すげー嬉しいよ。こうやって一人にしないでくれたのも感謝してる」
「先生……」
「けどさ、橘のそれは本当に恋愛感情なのかよく考えてほしい。君はゲイじゃないんだし、俺だって、君とどうこうなりたいってワケじゃないんだからさ。……わかったなら、今日はもうこの話はナシな」
「――……」
橘は何か言いかけたものの、結局は何も言わずに顔を伏せた。そうして、ややあってから再び口を開く。
「……先生がそう言うなら。ちょっと頭冷やしてきます」
言って、洗面所へと向かっていった。
寂しげな印象を受けたけれど、どうしようもない。一人残された諒太は、人知れずため息をつく。
(あーほんと危なかった。一線超えなくてよかった――お互い、絶対後悔するところだったよな)
告白されたとき、正直なところ嬉しかった。意中の相手からあんなふうに迫られて、真っ直ぐな言葉を聞かされたら、心だって揺らいでしまうに決まっている。
しかし、だ――自分は講師で、相手は生徒。何よりもノンケときた。立場や性別上のことを考えたら、簡単に受け入れていいものではない。
ただ、皮肉にも、思い出すのは先ほどの光景だった。
(橘のすごかったな。あんなので奥突かれたら……)
体は正直なもので、考えだしたらもう止まらなかった。熱を持て余し、知らずのうちに下腹部へと手が伸びてしまう。
「橘……」
やり場のない感情がまた膨らんでいく。切なさに、諒太の胸はじくじくと痛んだ。
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