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第5話 二度目の告白(2)

「改めて確認するけど、橘はゲイじゃないんだよな?」 「まあ……でも、先生は特別みたいで」 「いやいや、それもおかしいって。若いつもりではいるけど、俺だって二十四だよ? 高校生から見たら十分オジサンなんじゃ……」 「あーはいはい、じゃあ可愛いオジサンってことでいいです」 「うわーっ、オジサン言うのやめてえ!? まだ腹とか出てないから!」 「俺としては、腹が出ていようと出ていなかろうと構わないんすけど」  さらりと返されたのがまた衝撃的で、諒太は目を白黒させる。橘は気にせず淡々と続けた。 「『本当に恋愛感情なのかよく考えてほしい』って言ったのは先生でしょう。これが、頭冷やして冷静に考えた結果です」 「だからって自分のムスコに訊くなよ……それ、本当に冷静に考えた結果なのかあ? ああわかった、アレだ。俺のこと性欲処理的な――」 「いや……ほかに経験ないから、先生が上手だったのか、そうでもないのかわからないし」 「えっ、地味にショック」 「俺、そういうのなしにしても先生が好きだと思ってるんで。だって、セックスとかってその延長でしょう?」 「………………」  なんて純粋なのだろう。やはり薄汚れた大人とは違う――そう言われてしまうと、ぐうの音も出なくなって、諒太は視線を落とした。  相手はまだ高校三年生の年若い青年だ。大人である自分がしっかり導いていかなければならない、と頭ではわかっている。わかってはいる、はずなのだが。 「マズいって……俺、青少年の道を踏み外させようとしてんじゃん」 「なに言ってるんすか」 「教員以前に、大人としてどうかと思うっ」 「じゃあ、大人として責任取ってくださいよ。こんな気持ちになったの、先生が初めてなんだから」  橘が少しずつ詰め寄ってきて、諒太は思わず後退した。 「……趣味悪いよ。いい歳した男のどこがいいんだよ。高校生なんだから、周りに可愛い女子わんさかいるだろ?」 「歳も性別も関係ない――俺にとっては先生が一番です。お人好しで優しいところも、誠実で努力家なところも、ときに可愛らしい一面があるところだって、全部本気で好きなんすよ」 「っ……」  知らずのうちに壁際に追い詰められていて、背中が冷たいスチール棚に触れる。逃げ場なんてもうどこにもなく、熱っぽい視線を真っ向から受け止めるしかなかった。  橘はさらに距離を縮めると、いつもより低い声音で告げてくる。 「だから先生、俺と付き合って」  二度目の告白は敬語ではなかった。

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