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第5話 二度目の告白(3)
特別な意味で愛されているという、確かな実感――こんなものは初めてだ。胸がいっぱいになって、心臓がうるさいくらいに早鐘を打ち鳴らす。
今までが今までだっただけに、恋愛に関しては初心者もいいところだった。諒太は年甲斐もなく、真っ赤になって狼狽するしかない。
「く、『ください』はどうしたの」
「じゃあ、付き合ってください」
「いや、言いなおさなくていいけど……」
「付き合ってくれるのか、くれないのか。いい加減どっちかはっきりさせてくださいよ」
こちらの葛藤をよそに、橘は焦れたように催促してくる。
「……少しくらい、待ってくれてもいいだろ」
「そしたら、また大人ぶった言い訳して逃げるでしょ。……俺、もうそういったの耐えらんねっすわ」
「そうは言っても……こんな告白、初めてで――どう返事したらいいか、わかんないよ」
あまりの恥ずかしさに口元を手で覆う。
すると、橘はその手を取って間近で見つめてきた。
「『はい』か『いいえ』、それだけでいいです」
真剣な表情を浮かべたまま、静かに囁かれる。「ねえ教えて、先生」と。
こんなときに、考える余裕すら与えてくれないのはずるい。
彼の目に自分はどう映っているのだろう。大の男としてあるまじき、情けない姿だろうか。
だとしても、もう逃げることも、微妙な関係を続けることも嫌で――諒太は震えそうになる唇を動かす。二度も告白を受け、もはやこの感情を抑えることなどできなかった。
「は、い……」
講師という立場を忘れ、橘を生徒ではなく一人の男として見つめる。
橘は一瞬だけ目を見開いたあとに微笑を浮かべた。それから、遠慮がちに抱きしめてくる。
「――嬉しい」甘く掠れた声が耳朶をくすぐった。
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