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第6話 酔いどれな夏の夜(5)★
橘が欲しい。今すぐにでも抱かれたい――しかし、そんなこちらの意に反して、橘は目を逸らしたのだった。
「し、しません」
断られることはないと思っていただけに、諒太はぽかんとした。が、橘の顔は苦悩に満ちていて、何も返せなくなる。
諒太が黙っていると、橘は顔を手で覆いながら続けた。
「すみません。“初めて”は――ちゃんと、シラフの先生がいいです。もし先生が覚えてなかったら、すげーへこむと思うし」
そう告げられて、ようやく考えを理解する。
誠実な橘らしいが、自分とのセックスにそこまで特別な思い入れがあるとは思ってもみなくて、なんだかむず痒い気分になってしまう。
「わかった。きちんとした形で“初めて”の相手にしてくれるのを待つよ」
照れ隠しに言えば、橘は微妙な表情を浮かべた。
「それはちょっと、意味合いが変わってくるような」
「えー? だって君、童貞なんでしょ?」
「それはそっすけど」
「どっちの意味でも“初めて”なんだし……だったら、なおさら大切にしないとな?」
「先生が珍しくイジってくる……」
「イジってないって。嬉しいよ、俺とのこと大切に思ってくれて――ありがとう、橘」
顔を覆っていた橘の手を退けてしまうと、フッと笑って再び口づける。
「今日はお互いに我慢、だな」
軽いキスのあと、唇を浮かせて囁くように言った。
そのうえで、そろり、と手を滑らせる。何の脈絡もなく触れたのは、橘の熱く滾った男根だった。
「……そう言いながら、チンコ触らないでくれます?」
「いや、さすがに生殺しだろ? 橘だって、がっちがちで辛そうにしてんじゃん」
柔らかく指先で撫でまわして、その硬い感触を楽しむ。
橘は少し困り顔を浮かべたものの、抵抗する気はないようだった。むしろされるがままになっていて、諒太のなかで嗜虐心がほのかにくすぐられるのを感じた。
「――っ!?」
橘のものをぎゅっと強く握り込むと、すぐにいい反応が返ってくる。橘は肩をビクつかせ、ズボンの中をより窮屈そうにさせた。
「ハハ、また大きくさせてやんの。ズボン脱がせていい?」
「ちょっ」
制止の声など知ったことではない。返事を待たずに前を寛げてやれば、勃起しきった屹立がふるりと震えて姿を現す。
「っ、先生、どういうつもりなんすか」
「前にもやったし、ヌくくらいならいいだろ? それともこのまま治まるの待つ?」
「……今日、やっぱおかしいですよ。もうその気のくせに」
「ご名答。明日は仕事あるから、ちょっとだけ……な?」
諒太は自分のものを取り出し、二人分の屹立をひとまとめにして握った。
「ほら、こうすれば一緒に気持ちよくなれるから」
言いながら、そのまま上下に扱き始める。すると、たちまち快感に身を包まれ、腰の奥がじんと痺れた。
「先生、これ……っ」
「ん……橘の、ビクビクってした。裏筋が擦れるのとか、気持ちいいだろ?」
橘のものが自分のものを擦るたび、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け抜けていく。屹立から伝わってくる脈は速く、相手も同じように興奮してくれているのかと思うと、さらに熱が高まるようだった。
「橘も、手ェ貸して? 一緒にシよ?」
顔を見上げて甘えるように言うと、橘は静かに手を伸ばしてくる。
橘の大きな手が重なって、二人一緒に行為に及ぶ――その光景は視覚的にも淫猥で、諒太はすぐにでも達してしまいそうなほど感じ入ってしまう。
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