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おまけSS 新年のご挨拶と…
大みそかの夜、間もなく年が明けるという頃。
実家に帰省した諒太は、居間のこたつで橘とのんびり通話していた。すでに両親は寝室に移動してしまったし、美緒も早々と寝てしまっている。悠々自適で気楽なものである。
「そっちはどう? 家の手伝いがあるんだっけ?」
『はい。三が日は店閉めるんすけど、今日はおせちの引き渡しがあってなかなか忙しかったです。……ああそうだ。ぜひ諒太さんにも――と親が言ってたので、こっち戻ってきたら教えてください』
「ああ、わかった。ってなんで俺にも? なんか悪いような気が」
『いや、息子が付き合ってる相手だからって』
「え?」
『……え?』
二人して「え?」と妙な間が開く。
今、橘はなんと言ったのだろうか。聞き間違いでなければ、両親に二人の関係が認知されているということで――つまりは、
「もしかして親に話したのかっ!?」
『あ、はい。先日うちの店に来たときに』
「ま……マジか」
確かに付き合い始めてからしばらく経つけれど、こんなの寝耳に水だ。
根っからのゲイセクシャルであり、どこか世間に対して引け目のようなものを感じている諒太とは価値観の違いを感じる。
『なんかマズかったすか?』
「べつにマズくはないんだけど……ご両親、何か言ってなかった?」
『最近の子は進んでるのね、などと』
「ま、マジかー」
頭はすっかり混乱していて、思わずそんなふうに繰り返してしまった。
諒太の場合、まだその必要性を感じておらず、両親にはカミングアウトしていないのだが――普通はショックを受けるところなのではないかと、勘繰ってしまうものがある。
「ご両親もだけど、君もすごいよな……度胸あるっていうか。よく言おうと思ったな?」
『だって、つい自慢したくなっちゃって』
「自慢、って」
『俺にとって、諒太さんは自慢の恋人ですから』
「なっ!」
あまりにストレートすぎる物言いに顔が熱くなる。橘の素直な愛情表現は嬉しいが、こうしていちいち照れてしまうから厄介だ。
諒太はこたつの上に突っ伏すと、ぼそぼそと言葉を返す。
「それ、素で言ってんの?」
『勿論』
「よく恥ずかしげもなく言えるよな……俺は恥ずかしい」
『ハハ。諒太さん、顔赤くなってそう』
「……大人をからかうなよ」
言い当てられてばつが悪くなる。大人げなくむくれてみせるも、橘はさして気にした様子もなく話を逸らした。
『ああほら。そろそろ年明けますよ』
言われて壁掛け時計に目をやれば、時刻は十一時五十九分。年越しまであと一分というところまで来ていた。
すぐに日付が変わって、「明けましておめでとうございます」と交わす。
『今年もよろしくお願いします、諒太さん』
「こちらこそ今年もよろしく」
と、年始の挨拶のあと、諒太はさらに続けた。
「その……近いうち、大地の親御さんにあらためて挨拶しにいかせてよ」
ドキドキしながらそう告げれば、「ええ、きっと喜びます」という嬉しそうな声が返ってきた。
こんなにも幸せな年末年始は初めてかもしれない――諒太は新たな一年に思いを馳せつつ、柔らかな笑みをこぼしたのだった。
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