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本当は? 3

 そうはいっても時間が過ぎるのは当たり前で。  俺は気乗りしないまま言われたとおり、屋上へ向かった。  扉を開けると強い風が吹き抜けて中へ流れていく。  辺りを見渡すが静流はまだ来ていないようで、ほっと胸を撫で下ろした。  俺の身長の二倍はあるフェンスに寄りかかり、橙と藍色のグラデーションがかかった空を見上げる。  流れていく雲を視線で追いかけながら、小さく重たいため息を吐き出した。  しばらくそうしていた俺の耳に屋上の扉が開く音が聞こえて、慌ててフェンスから離れ姿勢を正す。 「ごめん。待った?」 「あ、いや……待ってない」  いつも通りの笑顔でそばまで近寄ってくる静流にぎこちない笑みを向けた。 「放課後の屋上ってなんかいいよね」 「……そうだな」  短く応えてフェンス越しからグラウンドを見つめる。  部活動に励む学生が米粒みたいにちらほら見え、たまに大きな声が辺りに残響して聞こえた。 「あの、さ」 「…………」  話しかけられたのになんて返事をしたらいいのか全くわからず、無言のままチラリと静流を盗み見る。  その横顔にどこか儚さを感じて、つい見とれてしまう。 「…………」  しかし、静流からその先の言葉が紡がれることはなく、迷うように揺れる瞳がそっと閉じられた。  そんなに言いにくいことなのだろうか。  ということは、あまり良い話ではない、ということで。  もしかして……友達も無理とかそう言われるとか……?  そう考えただけで、俺の心はひどく乱れて、慌てて言葉を紡いだ。 「い、言いにくいなら言わなくていいって……! また聞くからさ! それより、このあとどっか二人で遊びに――」 「綾都……! お願い……。聞いて。ちゃんと伝えないといけないことだから」 「…………」  静流のいつもより真剣な表情に俺は言葉を失い俯いた。  風の音が耳のそばを通り抜けて、優しく髪を撫でる。

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