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すっかり泣き止み、小さな両手を揃ってめいっぱい上げると、喜々として部屋から出て行った。 「まだ浴衣のままじゃないか」 二人にそう言うが、あっという間に姿が消えてしまった。 「······本当に、葵お母さまのことが好きだな」 分からなくもないけどと、小さく笑んで、呟いた。 と、その瞬間、碧人から表情が消え失せた。 誰もが恐怖に立ち竦む、寄る者を拒絶させる冷酷な表情。 その表情のまま碧人は、部屋から出て、二人が向かった先とは反対側に足を向けた。 普段から誰も寄りつかないのであろう、薄暗く、埃臭く感じられる廊下を歩いていく。 廊下の最奥、六畳程度の空間の中央の床に取っ手が見えた。 真四角な扉を持ち上げるように開けると、冷たい空気が流れ込んできた。 階下に繋がる階段の末端は、見えないほど暗い。 碧人は臆することなく、降りていく。 降り終わった先も先ほどの廊下と同じような道が続いており、等間隔に蝋燭に火が灯されていた。 左右には二箇所、座敷牢が斜め向かいにあり、誰かが入っている様子はないが、不気味さが残る。 そんな中でも平然と進んでいき、道の終わりがけ、一筋の光が見えた先にはあった。 目の前に広がる頑丈な木の檻。八畳程度の空間のほぼ中央に、こちらに向けて座っている者の姿が見えた。 正確には、片足ずつ縄で縛り吊り上げ、開脚した姿を向けている。 くぐもった声に機械の音が入り混じり、自身の足音が消えた途端、淫靡な雰囲気を纏わせた。 途端、碧人は堪えきれないといったように表情を緩める。 脇にある唯一の出入口にこれでもかとという錠前を取ってゆき、ようやく開ける。

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