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※一時の情交 ※
悲しみと愛を胸に抱えて互いの熱を確かめ合う
「っ……んぅ……」
冷たい空気が肌を撫でるが、そのような事は俺達には関係などない。互いの肌を重ねてしまえば、熱くて仕方がないのだから。俺は組み敷いた氷雨を見下ろしていた。
「銀……雪……」
悲しみと快楽で濡れた瞳で氷雨は甘い息を吐く。目元を拭ってやりかったが、泣き止まない氷雨の目元を何度も拭いてしまえば、布で擦れて腫れてしまう。なので今は氷雨の涙が流れるままに、その細い身体を貫くのであった。
「氷雨……」
愛しい男の名を何度も呼ぶ。その度にきゅっと自身が締め付けられ氷雨が甘い声を上げるのだ。
「あっ……ん……」
いつもなら激しく抱くところだが、今日は優しく抱いている。氷雨の体温をいつまでも感じていたい。氷雨がすぐに気を失わず長く夜が明けるまで抱きたいのだ。そうしなければ……二度と氷雨に触れられなくなるかもしれないという恐ろしい予感がするから。愛する相手の涙を見たせいか酷く悲観的になっている自分がいる。俺は考えるのを止めたくて、氷雨の唇を貪った。
「ん……ふぅ……あ……ぅ」
氷雨が目を閉じると、滴が頬を流れ落ちる。俺はそっとそれを掬うと、拳を握りしめた。今まで何度も氷雨が泣くところを見てきた。ただそれは俺や翡翠にしか見せぬ涙である。
皆の前では強がりな零月なのに、俺の前では泣き虫な氷雨。昔から優しく泣き虫な彼のままである。彼の涙を止めることなど出来ないが、今は泣かせるものを許しておけないと思う。
熱い舌を絡めながら腰を動かすと、くぐもった声で氷雨は啼いた。
「は……んっ……ぁ……ううっ……」
離したくない。誰にも氷雨を渡すものか。俺が氷雨の頭を抱き締めると、ぎゅっと締まった。
「くうっ……んぅ____!」
ぱたぱたと俺の腹に氷雨の白濁が掛かると同時に、俺の熱が氷雨の中で爆ぜた。一旦、氷雨から己の物を抜くと、唇を離して互いにぜいぜいと息をする。氷雨が片腕をゆっくりと伸ばすと、熱い指先が俺の頬に触れた。
「銀……雪……もっと私を……満たしてください……。この悲しみを忘れてしまうくらいに」
俺は氷雨を抱き締めると頷いた。
「ああ、勿論だとも。我が主」
すると氷雨が泣きながら微笑む。
「こういう時だけ、従者の如く振る舞うのですね」
「常に従者としての意識は忘れてはいないがな……ただそうだなあ……」
氷雨の額に口付けをする。
「俺は気分が向いたらお前への敬愛を口にしたくなるのさ」
俺は氷雨を膝に乗せて抱き締めると、氷雨が強く抱き返した。そして時間を忘れるまで何度も肌を重ねた。終わる頃には完全に氷雨は気を失って、眠ってしまった。
「氷雨……」
身体にいくつも付けた椿の花弁の如き跡。氷雨が悲鳴のような嬌声を上げるのもお構い無く付けたものである。そっとその身体に羽織を掛ける。
眠ってからようやく氷雨は泣き止んだ。氷雨が心を痛めて涙を流す様は、俺は見たくない。だからと言って、涙すらも堪えている様も見たくないのだが。俺は氷雨の頬に口付けた。俺はお前を守ろう。この命を賭けたとしても。俺は氷雨の青い髪を一筋掬った
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