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第9話 慣らされていく
「先輩こそ、開発の事務の子と噂あったじゃないですか」
「ああ、玉木か。アレな、ちょっとだけつき合ってたな、もうだいぶ前だけど」
「つき合ってたんですか?」
ツキン、と胸が痛む。
神谷はゲイというわけではないのだ。
やっぱり俺のことは興味本位の遊びなのだな、と高田は浮かれかけていた気持ちが急降下する。
いや、俺だってゲイではないのだけれど。
なんだろう、このモヤモヤとした嫌な気分は、と高田は黙り込む。
「なんで別れたんですか?」
「あっちが結婚願望強かったから。振られた」
「先輩が振られるなんて。エリート中のエリートじゃないですか、先輩は」
「俺、こういう性格だから、結婚とか向いてねぇんだよ」
こういう性格、と神谷が自嘲ぎみに言うのは、いったいどんな性格なんだろう。
そりゃあ、ちょっと口は悪いけど、仕事はできるし信頼できるし、案外優しいし……と神谷の長所ばかりを思い浮かべて、高田はため息をついた。
こんな人が恋人だったら、俺なら手放さないけどな、と心の中でつぶやく。
俺が女だったら、の話だけど。
「お前、風呂入ってきたのか」
くんくん、とニオイを嗅ぐように、神谷の顔が近づいて、高田は照れたようにうつむいた。
「一応……家出る前に」
「それで女みたいなニオイがするんだな」
「いつもは、こういうの、つけないんですけど」
「俺のためか?」
ソファーに並んで座ったまま、神谷は高田の腰を抱き寄せると、首筋に唇を押し当てた。
ちゅ、っと首筋を吸われるたびに、心臓が跳ね上がりそうになる。
神谷がいつもと違うタバコのニオイがするのも、ドキドキする。
神谷は高田の顔を至近距離でのぞきこむと、高田の前髪をかき上げるようになでた。
「先輩……」
「おっと。お前はキスはパスなんだっけ」
神谷は突然苦笑すると、顔を離してしまった。
ムードの盛り上がったところで突然お預けをくらったみたいに、高田は不安な気持ちになる。
ずるいよ、先輩。
そこで寸止めは。
神谷は高田のシャツのボタンをはずして手をすべりこませると、さわさわと胸をなでる。
「あ、あの……ここでするんですか?」
「ん? 気が向いたらどこででもするぜ」
はだけた胸に、神谷の唇が触れると、びくん、と身体が反応してしまう。
広い窓から午後の日差しが差し込んでいる。
こんな明るいところで、あんなモノやこんなモノを晒すのはさすがに気が引ける。
「今日は縛らなくていいだろ」
「もう……抵抗しませんから」
フっと笑みを浮かべて神谷はソファーの上に高田を押し倒す。
「ああっ……先輩、気持ちいいっ」
高田が気持ちいい、と言った途端にきゅっと乳首を吸い上げられて、強く舐め回される。
たった1度のセックスで、神谷のやり方に慣らされてしまった。
今日、俺は、気持ちいい、と言い続ける。
そしたら、神谷がそのたびに応えてくれるのだ。
照れもプライドも捨ててやる。
「先輩……も、ちょっと強く吸って……ああんっ……」
「お前、なんか今日可愛いじゃん」
神谷はたっぷりと胸を舌で舐め回しながら、高田のズボンを下着ごと引き下ろすと、すでに濡れそぼっているモノを優しく握った。
ぐちゅ、ぐちゅ、っと焦らすようにゆっくり扱きながら、そろりと後孔もなでられて、高田はびくんと身体をそらせる。
「そっか。ローション寝室だったな」
「移動、します?」
「んー、舐めて濡らすか」
ドキ、っと高田の心臓が跳ねる。
「ちょい、お前、うつぶせ」
ソファーの上に高田をうつぶせにひっくり返すと、神谷は床に膝をつき、尻を両手で割り開いた。
開かれた中心の窄まりにちろっと舌先が触れる感触がして、神谷の息がかかる。
「ひあっ、先輩っ、そんなとこっ、ああんっ……や……気持ちいいっ」
嫌、と言いかけて、気持ちいい、と高田が言い直すと、生温かくてざらっとした感触がそこに惜しげもなく与えられる。
「あん、んんっ……んっ、あっ、ひやっ」
舌が奥までぐちゅっと差し込まれた感触に、高田はぶるっと身体を震わせて、ソファーにしがみついた。
気持ちよすぎる。
俺だけこんなに気持ちよくていいんだろうか、と申し訳なく思うほど。
つぷ、っと浅く指を入れられ、それが前回は気持ち悪かったはずなのに、今日は痺れるほど感じてしまう。
「やっぱ、無理だな。痛そうだ。ベッド行くか」
痛くなかったのに……と途中で止められて高田はちょっと残念だったが、やっぱりベッドの方がいい。
その場で衣服を全部脱がせると、神谷はクスっと笑いながら高田をひょい、と抱き上げた。
「おー、お前軽いな。あんなにメシ食うくせに」
「せ、先輩っ! 自分で歩きますって」
「ちょっと体重計ってただけだよ」
ストン、と神谷は高田を立たせてやる。
「俺も筋力落ちたよなー」
腕をぐるぐる回しながら、神谷は先に立って寝室へ高田を連れていった。
モノトーンで統一された、シンプルな部屋。
神谷らしく整然とした寝室のベッドの上で、高田はこのベッドを汚すのが申し訳ないような気になる。
洗濯するのは先輩なのに。
「ほら、続きするからうつぶせ」
ポン、っとそばにローションの小瓶を投げ出すと、神谷は高田の上におおいかぶさり、背中にちゅ、ちゅ、っとキスを這わせていく。
「してほしいか、さっきの続き」
後孔を指でなでながら、耳元に囁かれてて、ゾクっと鳥肌が立ちそうになる。
「さっきの続きって……」
「舐めて欲しいか、ココ」
指でくりくり、と弄られると、さっきの痺れるような快感を思い出す。
「舐めて……欲しい……いいの?」
「素直でよろしい。お尻、上げて」
神谷は高田の後ろに回り込むと、ねっとりと窄まりの周囲を舐め回す。
「あ、ああん、先輩、も、指、挿れてっ」
唾液でたっぷり濡らしたそこに、すぐに指がつぷり、と入れられる。
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