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第16話 ヤってみる
居酒屋を出ると、神谷が勝手にタクシーをとめた。
「ラブホでいいんだろ?」
「いいです。どこでも」
高田が誘ったのに、神谷が場所を決めてしまう。
もっとも高田には他に思い当たる場所もないので、連れていってくれるとありがたい。
「今日はここにしようぜ」
神谷は前回とは違うホテルを指さして、ずんずんと先に入っていってしまう。
今日はここに……というなにげない言葉に、また神谷は関係を続けてくれるつもりなのだ、と高田は甘い気分になる。
部屋も神谷が勝手に選び、高田はただついていくだけだ。
自分が持ち出した条件なのに、神谷に連れられてきているような感じがヘンだ。
部屋にはいると神谷は、さっさと衣服を脱ぎはじめる。
「俺さ、出張あけでちょい疲れてるから、早くヤろうぜ。寝てしまいそうだし」
シャワーを浴びてくる、と神谷は浴室に姿を消した。
高田は頭がいっぱいいっぱいになりながら、自分も服を脱ぐ。
もう、ここまで来ただけで胸がいっぱいなのだ。
神谷みたいに慣れている人を相手に、セックスをするのはどうも自信がない。
女ならともかく、男と積極的にヤるのは初めてだ。
できることなら少しは満足してほしいのだけれど、ヤれるのかどうかすらわからなくて不安になる。
神谷と入れ替わりに高田もシャワーを浴びながら、神谷がしてくれていたセックスの手順を思い出す。
間抜けなことにお手本はそれしかない。
俺、ちゃんとできるかな……
先輩、痛いの嫌いだもんな。
俺の、そんなに大きくないし入るかな。
ここまで来ておきながら、高田は自分が神谷に突っ込みたいなどという衝動は持っていないことに気づく。
その証拠に、自分のモノは萎えたままだ。
勃たなかったらカッコ悪いな、と思い、また不安のタネが増える。
「先輩、何してるんですか?」
「いや、紐がねぇなあと思ってさ」
「紐……ですか?」
「ま、これでもいいか」
神谷は自分のネクタイを手にとる。
ほら、と差し出されて、高田はやっとその用途に気づく。
「縛るんですか?」
「俺さあ、痛かったら抵抗しそうなんだよね。お前、やったことねぇんだろ? 挿れる方」
「ないですけど」
「なら、一応保険かけとけよ」
神谷の高級そうなネクタイを手渡されて、高田はそれはあんまり申し訳ないと思い、自分のネクタイを手にとった。
神谷にリードされているので、何もかもがあの時の再現のように進んでいく。
違うのは突っ込む立場と突っ込まれる立場が入れ替わっただけだ。
抜けない程度にゆるく神谷の両手を縛る。
「俺、ヤられんの、久しぶりだからお手柔らかに」
神谷がニヤっと笑う。
ヤられたことがあるのか、と高田は驚いたが、少しほっとする。
考えたらヤられたことがあるから、ヤる方もあんなに上手なのかもしれない、と納得する。
でなければ、どうすれば相手が気持ちいいとか、わからないだろう。
そう思えば俺だってヤられたことがあるんだから、どこが気持ちいいかぐらいはわかる。
同じ男の身体なんだから、と高田は意を決して神谷をベッドに押し倒す。
「乳首、感じますか?」
「ああ……それなりに」
高田がそっと触れると、神谷はぴくり、と身体を震わせた。
「舐めますね」
確認するように言ってみるが、神谷は目を閉じ、無言だ。
ちゅ、っと吸ったり、舐め回して反応を伺っていると、神谷の半開きの口から時々甘いため息がもれる。
セクシーだな、先輩……
形の整った薄い唇から、ため息がもれるのを聞きたくて、高田は夢中で乳首を刺激した。
「もう……いいぞ、気持ちよくなってきた」
少し息をつまらせながら、神谷が先を促す。
次は、と考えると普通なら前を触るんだろうけど、後ろでイってもらう約束だから、触らないほうがいいのかな、と考える。
神谷のモノは立派に勃っているが、それは使うことはないのだ。
なんだかもったいないような気がする。
「先輩、ここ、触ってほしいですか?」
高田がそっと神谷のモノをなでると、一瞬神谷は気持ちよさそうな顔になった。
「いや、どっちでもいい。お前の好きにやれ」
「じゃあ、足、広げて下さい」
神谷は照れるでもなく、すっと膝を立てて足を開いてみせた。
神谷のそんな痴態に、自分が服従させているのだ、とゾクっとする。
高田は恐る恐る、これから挿れる場所に触れてみた。他人のそんなところを触るのは、初めてなので緊張する。
少しだけ指先を挿れてみようとすると、思ったより固い、と感じる。
「おい……そのまま指突っ込むのは、勘弁してくれねぇ?」
神谷が目を閉じたまま、眉間にシワを寄せている。
「俺のカバンの中に、ローションはいってるから」
そうだった……と高田はあわててローションを探しに行く。
そんなこと自分が用意しておくべきことだったのに、神谷に指示されるなんて情けない。
しかし、この人はいつもローション持って歩いてるんだろうか、と高田は少し嫉妬してしまう。
チャンスがあれば、また他の男とヤろうとしていたんだろうか。
他の男に盗られるぐらいなら、自分が、と高田はローションを手に取り、つぷり、と指を突っ込んだ。
神谷が、う、と声を漏らして苦しげな表情になる。
「きつっ、先輩力抜いて」
「抜いてるぞ……」
最初は気持ち悪いんだよな、これ、と高田は思い出し、できるだけ早く気持ちいい場所を見つけてやろうと中を探ってみる。
「先輩、このへん?」
「もう、少し奥……かな……うっ」
神谷がびくり、と反応したので、注意深くそのあたり擦ってみる。
「うっ……くっ」
明らかに神谷が官能的な表情を浮かべ、耐えるような声を漏らす。
ここ、擦られると強烈だよな、と高田はまた自分がヤられた時のことを思い出し、身体が熱くなる。
固い場所に無理やり指を増やして突っ込んでも、神谷は時々うめき声のような小さな声を漏らすだけだ。
本当に気持ちいいんだろうか、と高田は不安になる。
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