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第17話 できない
「先輩、気持ちいい?……ここ」
「気にするな……好きに……やれ」
指をさらに増やすと、神谷は軽く身体をのけぞらせた。
なんだか、どっちかというと苦痛を与えているような気がする。
「もう……いいぞ、挿れても」
神谷の方からゴーサインを出されて、高田は素直に指を引き抜く。
本当に大丈夫なんだろうか……と思いながら、自分のモノにもローションを塗るが、いまひとつ元気がない。
入るかな、と心配しながら入り口に擦りつけてみるが、ヘナヘナと力をなくしてしまう。
焦れば焦るほど、自分のモノは言うことを聞かなくて、とてもじゃないけど狭い入り口を貫けそうな堅さにはなってくれない。
神谷も気づいたのか、目をあけて、高田の様子を見ている。
「先輩、ちょっと待って……」
焦って自分のモノを扱いている高田の様子を、神谷は笑うでもなくじっと見ていた。
「なあ、高田……お前、本当は別に俺とヤりたくねぇんじゃないの?」
「そ、そんなことないんですけどっ、ちょっと緊張して」
「本当は、俺なんかじゃなく、女の方がいいだろ?」
「ちっ違いますっ! 俺はっ……」
「あのさ、約束だからヤらせてやるのはいいんだけど、セックスなんてヤりたい奴とヤる方がいいぞ?」
「俺は! 先輩がいいんですっ!」
ムキになって自分のモノを勃たせようとしている高田を見て、神谷は軽くため息をついた。
「おい、ちょっとこれ、ほどけ。あとでまた縛ってもいいから」
命令されるように言われて、高田が縛ったネクタイをほどくと、神谷は高田を押し倒して、下半身をやわやわと扱いた。
「あっ先輩っ、そんなっ」
「じっとしてろ」
神谷はためらうこともなく高田のモノを口に含むと、扱きながら舐め回した。
温かくてなんともいえない快感が与えられる。
「ああっ……先輩っ……きも、ち、いいっ……んあっ」
ちゅばっ、くちゅっっと派手な音を立てて、神谷は吸い上げるように顔を上下させて、唇で高田のモノを扱く。
「あっ、やっ、すごっ、いっ、いっ、イクっ、ダメっ、イっちゃうっ!」
「イきたかったらイってもいいぞ。どうする」
「ああっ、そん……なっ……ふあっ、ああん」
イきたい……気持ちよすぎる……
だけど、先輩をイかせないといけないのに……
頭のすみで葛藤しているうちに、神谷にどんどん激しく刺激を与えられて、追いつめられていく。
「ああんっも、ダメ、やっ、ああっ」
ヒクついてもうイきそうだ、と思った瞬間に、突然神谷は口を離し、がばっと高田の上に覆い被さって、身体を押さえつけた。
「せん……ぱい……」
神谷はじっとにらむように高田の顔を見下ろしていたが、脱力したように身体を離す。
「やべ、俺が突っ込みそうになった」
苦笑した神谷はネクタイを手にとると、ほれ、と高田に渡そうとする。
高田はそれを受け取らずに、悲しげに首を横に振った。
「もういいんです……先輩の言うとおりです。セックスなんてヤりたい人がヤるものですよね。俺、無理だから」
「なら、イかせてやろうか?」
神谷が高田のモノに手をのばそうとすると、高田はそれもよけてしまう。
「先輩、突っ込みたかったら、突っ込んでください。俺に」
高田が神谷を誘うように、ベッドに横たわる。
神谷は怪訝な表情を浮かべながらも、高田の上に重なり、下半身に手をのばそうとする。
「あ、そうだ」
高田は不意に何かを思い出したように、微笑みを浮かべた。
「俺が好きにする権利があるんだったら……」
なんだ?というように神谷が高田の顔を見ると、高田はちょっと照れたような顔をした。
「キス、してください……まだしたことないから」
神谷は驚いたような顔になり、それからふうっと深いため息をついて、ぽんぽん、と高田の頭を軽くたたいて身体を起こした。
高田も驚いて、上半身を起こす。
「高田。遊びはここまでだ」
「遊びって……どうして……先輩」
「お前、それ、もう交換条件でもなんでもないだろう」
「そんなことありません、俺がして欲しいようにしてもらうんですから」
「あのさ、高田。交換条件なんかでそういうことすると、後悔するぞ」
「先輩に言われたくないですよ、やったくせに」
「やった奴が言ってんだよ! 後悔するって」
少し怒ったように、神谷は目をそむけた。
「先輩……後悔したんですか」
「お前さ、交換条件で俺に言うこと聞かせて、抱かれて、それがずっと続いたとして、不安にならねぇの? いくら俺が抱いてやっても、それは自分が命令したからだ、とか思わねぇ?」
「そりゃ、思うかもしれないけど……それでも、俺にはそうするしかなかったから」
「俺だって同じだ。最初はそうするしかなかったんだよ。お前、ゲイじゃねぇし」
神谷は高田の目を見ず、すこしイライラしたように爪を噛んだ。
「それでも、一度でもお前とヤれたら、それでいいと思ったんだ。あん時は」
「どうして……俺と……」
「ずっと狙ってたんだ! お前、おかしいと思わなかったか? 俺、なんでこんなもん、都合よく持ってると思う」
神谷がローションのボトルを手に取り、ぽい、っと高田の目の前に投げ出す。
「それは……誰かと出会った時に、いつでもヤれるように、とか」
「バカか、お前。俺はヤリ魔か……」
神谷は呆れたようにがっくりと肩を落としてため息をついた。
「お前とそういうチャンスがあった時のために、デスクの引き出しに常備してたんだよ」
「先輩が……? 俺をずっと狙ってた……?」
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