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第13話 夜が更けて

 ベッドでクッションにもたれかかった沖田に寄り添って、映画を観た。  映画を観ながらも、沖田は広瀬にキスを落としてくるし、そのたびに広瀬も沖田の頬にキスを返す。  裸のまま、言葉もなく身体だけが密着して夜が更けていく。  映画のエンドロールが流れると、沖田は広瀬に深く口づけて明かりを消した。 「今日は早めにこのまま休むか」 「うん……でも……」  意外だった。  広瀬は当然沖田が自分を抱くんじゃないかと予想していたのだ。 「隼人は明日は収録だろう。ゆっくり休んだ方がいい」 「先生は……俺を抱かないの?」  ストレートな広瀬の言葉に、沖田は一瞬驚いた顔をしたが、さとすように優しく髪を撫でる。 「明日は大事な仕事だろう?」  それ以上強く迫ることもできずに、広瀬は黙り込む。  もうこんな夜は二度と来ないかもしれないのに、と思うと寂しくて涙が出そうになる。  沖田は再び葛藤する。  翌日の大事な仕事に差し支えてはと思って沖田も我慢していた。  男同士で抱かれる側の身体の負担を、広瀬は知らないのだろうと思っていたのだ。  それでも寂しそうな広瀬を見ると、抱いてやりたい、と思う。  広瀬の性格だと、中途半端なままの方が悩んで仕事に差し支えてしまうのではないかと思えてくる。  何より沖田自身が今日、仕事より恋人の方が大事だと明言してしまったではないか。 「そう……だよね。男同士だし、無理だよね。ごめんなさい、ヘンなこと言って」 「違う、隼人。全然ヘンなことじゃないぞ。俺だって、お前を抱きたい」 「本当……?」  広瀬がヘンな誤解をしてしまいそうで、沖田は抱きたいと口走ってしまった上、広瀬を強く抱きしめてしまった。 「ちょっと待ってろ」  沖田はベッドから抜け出ると、引き出しからコンドームとローションを探し出し、ベッドの枕元に置く。  それを見ていた広瀬にはもう、沖田の気持ちは伝わったのだろう。  広瀬は黙って沖田に抱きついてきた。 「隼人……声、絶対に出すなよ。それだけは約束だ。声出したら止めるぞ」  広瀬は言われている意味もわからずにうなずく。  隣近所に聞こえるからだろうか、とぼんやり思ったりしていた。 「我慢できるな?」  沖田は念を押して広瀬がうなずいたのを確認してから、抱き寄せた。    溶けるような深くて甘いキス。  これから抱かれる、と思っただけで、広瀬の心臓は早鐘を打ち、頭は何も考えられなくなっていく。  沖田の優しい唇が首筋をつたい、胸にたどりつくと背筋が痺れるほどの甘い快感がやってくる。  広瀬は声を出すな、と言われたのを忠実に守ろうとしていたが、それが想像以上に大変なことだと思い始めた。  胸の刺激だけでも溶けそうに気持ちいいのに、沖田の手が下半身にのびて広瀬のモノをそっと握っただけで、思わず小さく声が出てしまった。  沖田は広瀬の唇に指を押し当てて声を出すなという仕草をしてから、下半身を扱き出す。  先走りのぬるぬるしたところを、円を描くように撫でられ、広瀬は沖田の指にしゃぶりついて声を我慢した。  沖田は広瀬のモノをゆるゆると触りながら、広瀬の身体をうつぶせにさせて、腰を抱えるように起こす。  照明は暗いが、よつんばいの広瀬の後ろに沖田の顔があるのは明らかで、広瀬は恥ずかしくて顔を枕にうずめた。  そして、この方が声を我慢しやすいと思った。  沖田は広瀬の尻を指で割り開くと、その中心の蕾に舌を這わせる。  恥ずかしくてたまらないけれど、その舌の動きが与える快感は強烈だった。  広瀬は枕にしがみついて声を堪えるのが精一杯だ。  静かで物音ひとつない寝室に、ぴちゃぴちゃと沖田の発する音だけが響くのを聞いて、広瀬は耳からも追いつめられる。  にゅる、と熱い舌は蕾の奥まで差し込まれ、同時に前もゆるゆると扱かれているので、広瀬はもう爆発寸前だ。 「せ…先生……」 「どうした」 「イッちゃう……」  沖田はクスっと笑って、前を触っていた手を離した。  堪えてはいるが限界だろう、というのは広瀬の震え具合で分かる。 「ココをもっと気持ち良くしないとな」  沖田が再び蕾の奥へと舌を押し込むと、油断したのか広瀬が小さく悲鳴を上げた。 「声は出すな、と言っただろう」 「だって……先生が……んん……」  広瀬は涙声で訴え、また枕に顔を埋めてしがみついている。  沖田は、そんな健気な広瀬の様子が可愛くてたまらない。  ローションをたっぷりと手にとってなじませ、ゆっくりと指を差し込んでいくと、広瀬は緊張に身体をこわばらせた。 「隼人、怖くないから力を抜いて。痛くないようにゆっくり挿れるから」  沖田は奥まで挿れた指を抜き差しはせずに、中をゆっくりと探っていった。  軽く擦ると広瀬の身体がびくっと反応する箇所を見つける。 「ここだな」  何度かその箇所を擦っていると、広瀬の身体はぶるぶると震え出し、萎えかけていた中心がまた張りつめていく。  あまり追いつめすぎないように沖田は指を2本に増やし、ゆっくりと抜き差しを始める。  それでも広瀬はついに枕から顔を離し、すすり泣きのような声を上げた。 「先生っもうっ……もうダメっ」 「隼人、まだだ。じっとしてろ」  沖田の低い声で命令されると、広瀬はまた必死で枕にしがみつく。  沖田は先を急いで、指を3本に増やしドリルのように回転させながら、思い切りねじ込んだ。  震える広瀬の腰をつかまえて、指をぐりぐりと回して解す。  可哀想だとは思ったが後で痛い思いをさせるぐらいなら、ここが肝心だ。  なおさら丁寧に沖田は時間をかけて解していた。  もう大丈夫か、と思い指を引き抜いて、自分のモノにゴムを被せてローションを塗りつけていると、広瀬は急に安心して力が抜けたのか、ぐったりと横になってしまった。  涙でぐしょぐしょになっている広瀬の顔を見ると、沖田は自分がずい分酷いことをしているような気がしてしまう。

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