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第14話 愛してる
「大丈夫か? 今なら止めれるぞ?」
そっと髪を撫でて問いかけると、広瀬は激しく首を横に振る。
ここまで我慢したのに、と恨みがましい目で見られて、沖田は苦笑する。
広瀬を仰向けにして、膝裏を両手で支え足を開かせると、広瀬は明らかに緊張した顔になった。
「怖いか?」
「だい……じょうぶ」
「挿れるぞ」
沖田はさすがに広瀬が声を上げるのではないかと思い、キスで唇をふさいでからゆっくりと挿れていった。
熱くて固い塊が身体に押し入ってくるのに、広瀬が緊張したのは最初の一瞬だけだった。
絶対に少しは痛いと覚悟していたのに、ぬるりと身体に挿れられていく感触は、瞬く間にぞくぞくする程の快感に変わってしまった。
キスで口内を弄られ、下半身には鋭い快感が生まれて、広瀬はシーツを握り締めて悶えた。
めりめりと押し開くように大きなものが少しずつ身体の中に押し込まれていくたびに、経験したことのない痺れるような快感が広がっていく。
「隼人、痛いのか?」
広瀬は沖田を見つめて、ふるふると首を横に振る。
沖田が少しでも苦痛を和らげようと、広瀬のモノに触れると、広瀬は身体をびくびくっと激しくのけぞらせた。
「ああっ先生っ……イクっ」
ほとんど扱いてもいないのに、広瀬が突然勢いよく達したので沖田はやっと、苦痛ではなく快感だったのかと気づいて笑った。
それならもう大丈夫だろう、と絶頂に震えている広瀬の中へ一気に奥まで押し込んだ。
「入ったぞ、隼人」
「うん、入る前にイっちゃったけど……」
潤んだ瞳で言い訳する広瀬が可愛すぎて、沖田は優しいキスを唇に落とす。
「動いてもいいか?」
「うん……」
「イク時以外は声、我慢しろよ」
ゆっくりと腰を前後させながら、この辺だったかな、と前立腺の位置を探っていると、広瀬がまたびくっと身体を跳ねさせる。
「分かりやすいな、ココか?」
笑いながら沖田が問いかけると、広瀬は沖田の言うココ、というのが何のことかも分からずにうなずく。
とにかくそこを擦られると、電流のように快感が迸るのだ。
「うん……でも、そこ……ダメ……あっ」
「どうして。気持ちいいんだろ?」
「ダメっ……声……出ちゃう……ああっ」
わざと狙って沖田が突き上げると、広瀬が思わず嬌声を上げた。
「隼人、声出したら止めるぞ」
沖田が意地悪く低い声で言うと、広瀬はあわてて沖田にしがみつき、唇を沖田の肩に押しつけて声を堪える。
「そう、いい子だ……我慢してたらもっと気持ちよくしてやるからな」
沖田は広瀬の頭を抱え、自分の胸にしっかり押しつけて口をふさぐと、だんだんと激しく腰を動かし始めた。
もちろん、きっちり広瀬のいいところを狙い撃ちである。
広瀬はしばらくぎゅっと抱きついていたが、突然ぎりっと沖田の背中に爪を立てて、身体を痙攣させた。
それでも沖田が動きを止めないでいると、二人の腹の間に生温かい液体が広がっていく。
沖田は広瀬が声を我慢したまま二度目の絶頂を迎えていたのに気づいた。
声も立てずに後ろを突かれながら達した広瀬は、その後も執拗にそこを擦ろうとする沖田の動きに身震いが止まらない。
全身に激しい絶頂の波が何度も襲ってきて、放心状態で沖田にしがみついている。
「隼人、大丈夫か?」
「先生……もっと……」
自分の口走っていることが分かっているのだろうか、と思うぐらい広瀬はうつろな目を彷徨わせて、微笑みを浮かべている。
「快いのか……」
「うん、先生もっと……もっと俺を欲しがって……お願い……」
広瀬の目から涙が零れ落ちるのを沖田は見逃さなかった。
微笑みながらぽろぽろと涙を零す。
嬉しいのか悲しいのかよくわからない広瀬の胸の内。
「しがみついてろ」
沖田の気持ちの方が追い込まれた。
首に手を回して沖田の身体に唇を強く押しあてながら震えている広瀬に、沖田は本気で激しく突き立てる。
広瀬がもっと本気で来い、と沖田を煽ったのだ。
もっと欲しがれ、と。
この状況でそんな台詞を無意識に吐く、広瀬が愛しくて、強く激しい衝動が沖田の中にこみあげてくる。
大事にしているものをめちゃくちゃに壊してしまいたくなるオスの本能だ。
「先生……また……イクっ……」
「俺もだ、隼人、もうイクぞ」
沖田は広瀬の唇を貪りながら、激しく腰を打ちつけ、広瀬が達した瞬間の強い締めつけで同時に達した。
どくっと沖田が熱いものを注ぎ込んだ刺激で、広瀬は最後の快感が体中に広がったような気がした。
「ごめんな……つい我を忘れて、優しくできなかった」
沖田は本能のままに激しく広瀬を突き上げてしまったことを後悔した。
明日大切な仕事だと分かっていたのに、最後は自制がきかなかった。
「いいよ……先生、俺……嬉しい」
広瀬は力なく微笑みを浮かべる。
「喉、大丈夫だな?」
「喉……?」
「喘ぐと喉を痛めるからな……明日、声出るだろうな?」
広瀬はやっと沖田が声を出すなとしつこく禁じていた理由に気づき、あーあー、と声を出してみる。
「多分、大丈夫。声、あんまり出さなかったでしょ」
「ああ、そうだな。よく我慢してたな」
沖田が頭を撫でると、広瀬は嬉しそうに照れた。
沖田は腕枕の中に広瀬を抱きかかえる。
まだ少し息の荒い沖田の身体から漂ってくる、オスのフェロモンのような匂いが心地いいと広瀬は思っていた。
沖田の汗の匂いさえも恋しい。
沖田がぐったりしている広瀬に、それでもまだ熱く口づけると、広瀬は足も手も絡ませてしがみついてくる。
これ以上密着できない、というぐらいに身体を絡ませながら、それでもまだ2人は求め合っていた。
「隼人……俺は心配性で、恋人を縛りつけて、息苦しくさせてしまうことがあるんだ」
「うん……知ってる」
「恋人は腕の中に閉じ込めて、押しつぶしてしまいそうになる」
「うん……それも知ってる」
「優しいふりしてるけど、わがままで気性も激しい」
「うん……」
「大人じゃないぞ」
「うん。今日全部教えてもらった……先生の愛し方」
広瀬はすべてが終わってしまったような気持ちで、それでも精一杯微笑んで見せる。
沖田はもう一度しっかりと広瀬の身体を抱きしめて、耳元で囁いた。
「隼人……愛してる」
沖田の気持ちに偽りはなかった。
軽々しい気持ちで吐ける言葉じゃない。
「うん……先生……ありがとう」
眠るのはもったいないと思いながら、広瀬は急速に眠りの中へ落ちていく。
先生ありがとう。
俺、嬉しかった。
そうつぶやきながら、眠りの中へ。
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