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第19話 初めてのデート

「さあ。今からどうする?貴重な恋人同士の時間だぞ」  そうだった。  沖田がいつ帰ってくるかもわからなかったので、何も考えていなかった。 「このままベッドへ行くのもいいが……それは晩にとっておくとして、今日は出かけてみるか?」  そうだ。  これからはいつでも会えるんだから、それは晩にとっておいてもいい。  広瀬の心にも少し余裕ができた。 「デート、してみたいです。先生と」 「こら、先生じゃない、と言っただろう」  沖田は自分のドレッサーから洋服を何枚か取り出すと、その中からシックな紺色のセーターを選び出した。 「隼人、着てみろよ」 「これをですか?」  沖田の洋服を借りて着る、ただそれだけで広瀬は幸せいっぱいな気分になる。  まるで恋人同士みたいだ。  いや、恋人なんだけど。 「やっぱり似合うな……これを付けて」  シルバーのアンティークなネックレスを渡され、広瀬はそれも身につけてみる。 「よし、これで5歳は大人びたな……お前は大人っぽい服装がわりとよく似合う」  沖田は目を細めて、可愛くて仕方がないという顔で広瀬を着せ替え人形にしているようだ。  それから沖田は真っ赤なロゴのはいったTシャツに着替えると、派手な皮ジャケットをはおった。  そんなステージ衣装みたいなのを着て歩いたら目立って仕方がないのに、と広瀬は思わず笑ってしまう。 「ん? 変か?」 「いえ……目立つだろうなあ、と思って」 「俺とお前が歩いてれば、嫌でも目立つさ。気にするな。宣伝だと思えばいいさ」  そう言って沖田はサングラスをかける。  広瀬も持ってきた帽子を深くかぶって、念のためにサングラスをかけた。  沖田の車で街へ出る。  沖田は周囲の視線などまったく気にしない様子で歩いているが、隣を歩いている広瀬は身が縮まるような思いだった。  周囲の人が皆自分たちを見ているような気がする。  沖田とつき合う、ということはこういうことなのだ。 「映画館にでもはいるか」 「何か見たい映画があるんですか?」 「いや……でも映画館なら暗いし、人に囲まれることもない」 「そうか、じゃあ」  広瀬が萎縮しているのを察したのか、沖田は近くにあった映画館に入ると、適当な映画を選んだ。  沖田らしくない恋愛ものの日本映画だ。 「これが見たいの?」 「いや、俺が音楽作ったんだけど、ちゃんと見てなかったしなあと思ってさ」 「へえ……翔が音楽作ったんだ」  さりげなく広瀬は沖田の名前を呼んでみる。  そして、ただそれだけで顔が少し熱くなった。 「ま、映画の内容はよく知らんがな」  場内が暗くなると、沖田はひざの上にジャケットを広げて、その下からこっそり広瀬の手を握ってきた。  映画が始まって30分もたつと、沖田は隣であくびをしている。  どうやら退屈しているようだ。  広瀬もつないでいる手が気になっているばかりで、映画の内容などまったく頭にはいってこない。 「隼人、出ようぜ」  突然沖田は広瀬にそう囁くと、ぱっと席を立ってしまった。  広瀬はあわてて暗がりの中を沖田を追いかける。 「映画、いいんですか?」 「ああ、面白くなかっただろ? 最初の30分がつまらない映画なんて見たって一緒だ」  つまらないことに時間を使うのが嫌いなのだろう。  そんなところはわがままなのかもしれないが、沖田らしいと広瀬は思う。 「おっと、トイレだ」  上映中なので、さすがにトイレの中に人はいない。  用を足すのかと思えば沖田はニヤっと笑いを浮かべて、個室の中へ広瀬を連れ込んだ。 「な……何? 2人でこんなところに……」 「シッ、声出すなよ。怪しまれるだろ」  沖田は唖然としている広瀬を狭い個室の壁に押しつけると、激しくキスをする。 「我慢できなくなってきた」  荒っぽく唇を重ねながら、沖田は広瀬のズボンのファスナーを降ろして、広瀬のモノを掴みだしてしまう。 「翔! 翔ったら! こんなところでしなくても……」 「静かにしろ! お前も俺のを出せ」  小声でやりあっているが、沖田には逆らえないと観念した広瀬は、同じように沖田のモノを取り出して握る。 「隼人、たまってるだろ。一緒にイこうぜ」 「あ……んっ……翔っ……」  信じられない。  芸能人2人揃って、映画館のトイレでこんなことをしているなんて知られたら、大スクープだ。  広瀬を追いつめるように沖田の手の動きはどんどん激しくなっていく。  イきそうだ……と思った瞬間に、誰かがトイレに入ってきた足音がした。  驚いて手を止めると、沖田は広瀬の唇をキスでふさぎながら、更に激しく扱き始める。 「んっ……んんんっ!!」  人がいるのに……  ぐちゅぐちゅと扱いている音が……  その誰かが用を足し終えて、出て行った足音がしたのは、2人とも勢いよく達したあとだった。  沖田はまったく動じる様子もなく、手早く出したものの処理をして、周囲の気配を伺ってから個室の外へ出た。  まるでいたずら盛りの高校生みたいだ。  

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