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第28話 離れない
「わかりました。そういうことなら、監督不行き届きで、会社側にも責任がありますね。同じ事務所の人間が、身内のスキャンダルをわざわざリークするなんて不祥事は許せません」
「しかし、さすがにこの内容まで一緒に出たら、キツいな……」
自分のミスだと思っている広瀬は、無言で写真を見ながら青ざめている。
沖田とヤってるのがまるわかりの会話内容だ。
さすがにこれを全国の人に見られるのは抵抗がある。
「とりあえず、マスコミが押しかける前にどこかホテルでもとって、ふたりには避難しておいてもらうことに……」
「俺、逃げないよ。いつまでも逃げ続けられるわけないし」
「しかし、隼人。どうしたいんだ?」
「佐々木さん、ごめんなさい。ここまで育ててもらったのに」
広瀬は佐々木に深々と頭を下げて、精一杯謝罪する。
「俺、今の仕事捨ててでも守りたいものがあるので。賠償金とかはきちんと払います。翔だけなら、この程度のスキャンダルがあっても、仕事を失うことはないでしょう?」
「俺のことは、気にしなくていい。大丈夫だ」
「だったら、俺は翔の弱みになりたくないから。俺、このまま引退する方向で、別の人生選びます」
「ちょっと待った、広瀬くん。あなたの考えはよくわかったけど、事務所とは契約があるから、逃げられたら困るのよ」
「大丈夫です。逃げません。マスコミが来たら、きちんと応対します」
佐々木は内部調査をして、社長と相談すると言って、帰っていった。
とりあえず、広瀬をクビにするというような話ではなかったことに、沖田は安堵した。
あれが単なる脅しで、久住が何か見返りでも要求してくるようなら、対処のしようがあるのだけれど、今のところ久住が犯人だという確証はない。
「隼人……悪かったな。こんなことになって」
「翔、お互いに謝るの、やめようよ。俺たち、別に悪いことしてないし」
「そうだな。事務所には申し訳なかったが」
重なる唇。
何よりも守りたいものがあれば、それだけでいい。
状況は良くはないが、広瀬にとって、沖田との関係さえ無事なら他は犠牲にしてもいいと思えた。
着ているものを脱ぎ捨てて、もつれるようにベッドへなだれこむ。
引き離されようとすると、余計に離れたくない想いが膨れ上がる。
世の中全部を敵に回したとしても、絶対に離れないと、ふたりの気持ちがひとつになる。
沖田の唇が、広瀬の敏感な場所を這い回て、追い詰める。
乳首に吸い付きながら、広瀬の中心へ手を伸ばすと、それは待ち遠しかったというように、濡れそぼっていた。
「翔……もう、挿れて」
余裕のない沖田の表情を見て、広瀬は微笑みながら足を開く。
早くひとつになりたい。
少しでも離れているのが、無性に不安で。
「早く……翔のをちょうだい」
「隼人……」
沖田は欲望にまかせて、ねじこむように固くなったモノを広瀬の中へ沈めていく。
止められない。
ガツガツと激しく腰を動かすと、広瀬が小さく悲鳴をあげてのけぞる。
「声……出していいぞ」
「いつもダメだって言うくせに」
広瀬が泣き笑いのような顔になる。
いいんだ、今日は。
たぶん、しばらく広瀬は表舞台に出ることはない。
仕事のことなど忘れて、今は好きなだけ啼かせたい。
「あっあっ、ああっ、翔っ、あっそこっ」
「ココだろ、お前の、好きな、とこ」
「ひっあっ、イっちゃうっ」
「隼人……俺を見ろ」
「んっ、翔っ、あ、イクっ、イクっ……」
「可愛い顔。今日はじっくり見ててやるから、イけ」
「あーっ! イクっ! ああっ」
のけぞるように達した広瀬の頭をなでながら、沖田は激しく突くのをやめない。
「翔っ、翔っ……すごい……もっと」
「もっと声聞かせろ、顔も見せろ、隼人」
「ん、ああっ、翔っ、イかせて、もっと、ふっああっ」
「1回出すぞ。俺も」
「ん、翔っ、キスして、いつもみたいに……むんんっ」
舌を絡ませながら、広瀬がビクビクっと達するのを追いかけるように、沖田も思い切り欲望を放出する。
つながっている部分が、ドクンドクンと脈をうち、広瀬は恍惚とした表情を浮かべた。
ふいに沖田は、最近広瀬のその顔を見たことを思い出す。
「そういや、この間のお前の写真……坂下が撮ったやつ」
「……どうかした?」
「あんな顔、他のやつに見せるなよ」
「あんな顔って……ああ、アレ」
「ちょっとやばいぐらい色っぽい顔しやがって」
「うん、あれは坂下さんに、一番幸せなときを思い浮かべろって言われたから」
「何を思い浮かべたんだ」
「今の、この瞬間」
広瀬がクスっと笑いながら、後孔をキュっと閉める。
「これ以上に幸せなことなんてないもん」
「だからって、他のやつに見せるなよ、そんな顔」
「翔……俺、絶対に翔から離れないからね」
「わかってるさ」
「だから、それ以外のことは翔の好きにしていいよ。仕事とか」
「わかった。心配するな。俺はお前を離したりしない」
「じゃあ……誰かに邪魔される前に、もう1回しよ」
「今日は一晩中するか……」
ゆるやかに再び沖田が腰を動かすと、広瀬がまた心から幸せそうな笑みを浮かべる。
何度身体を重ねても、そのたびに狂おしいほど、求めてしまう。
こんな幸せを見つけてしまったら、手放すなんてありえない。
「翔……気持ちいい? 俺の身体、好き?」
「好きだ……ここをこんな風にするのがな」
「んっ、それっ好きっ、翔っ、好き、イくっ」
ぐりぐりと中をかきまわされながら、広瀬は絶頂付近をさまよい続ける。
意識を飛ばさないように、沖田にしがみついて、何度も声をあげて快感を貪った。
その晩は、身動きできなくなるまで求め合って、抱き合って眠った。
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