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第6話 バージン
――興奮する。
そう言ってもらえてすごく嬉しかった。
義信さんみたいな人が俺に興奮してくれるのが、すごくすごく、嬉しくて。
「あっ……ン」
ドキドキした。
「ぅ、ン……ン」
この人にしてもらえるなんて、って。
「どこが感じるの?」
「ひゃっ……ぁ、あ」
義信さんの声は低くて、大人っぽい。その声に耳元で囁かれると、心臓が爆発しそうになる。だって、こんなかっこいい人なんて、俺の周りにはいないから。だから、なんだか、今ここにいることがすごく変な感じがする。ふわふわしていて。
「えっ……と」
感じるとこ、どこ、って訊かれてたけど。
「うん」
「っ」
ど、しよ。恥ずかしい。だって、言っちゃったから、キスもしたことないって。それってつまり全部のこういう行為が未経験ってことで。それなのに自分が知ってる自分の感じるところなんて、それはつまり、一人でしてないとわからないわけで。
それって、一人でいじってたってことでもあるわけで。
「じゃあ、一人でする時は?」
それを言うのは。
「僕はね……」
「ぇ?」
義信さんが笑いながら、身体を密着させて、俺の背中を手で撫でてくれる。ピッタリと重なると、彼の硬いのが下腹部に触れて。俺がさっき口でしゃぶった義信さんのが。
「さっき汰由が口でしてくれたところ、唇で丁寧に扱いてくれたの、すごく好きなんだ」
「……」
口で?
「とても気持ち良かった」
「……汰由は?」
俺の口でしたの、ちゃんと気持ち良かった?
「汰由の気持ちイイところも教えて」
名前を呼ばれて、ぎゅっと下腹部がさっきよりも切なくなった。俺、こんなかっこいい人のこと口で気持ち良くしてあげられてたんだって。ちゃんと興奮してもらえたんだって。
「あ、の…………胸、とか、触ったり」
「好き? 乳首」
「ひゃあぁっ」
ゾクゾクってする。乳首を義信さんの指にこねるように押し込まれて、危ういくらいの快感が走る。
「あ、あ、あ」
じっとしていられないくらい。
「ひゃ、ぁっン」
抓られるの気持ちいい。
「ぅんんんっ」
指でカリカリされるの、気持ち、ぃ。
「あぁっ……ン」
つままれてから弾くように扱われるのも、すごく気持ちいい。
「あ、あぁぁぁぁっ」
義信さんの唇にキスしてもらうの、すごくすごく。
「気持ちいい?」
「あ、は……ぃ、おかしく、なっちゃいそ」
こんなにいいなんて思わなかった。自分でするのとは全然違ってた。義信さんが上手なのか。普通はこのくらい気持ちいいのか。
コクコクと頷くと、その様子にまた耳元で義信さんが笑って、可愛いなって呟いてくれた。
「あっ……ン、こんなに気持ちぃ……なんて」
「?」
「義信さんの指、気持ちぃです」
「ありがと」
とろけそう。
「あ、あの……」
もっと、したい。
「また口で、します」
「……」
「ここ、気持ちぃ、って言ってもらえた、から」
またひざまづいて、さっきたくさんしゃぶったそれにキスをした。
「あっ……む」
そのまま口に咥えて。
「ン、ん」
くびれ、のとこ、だよね。さっき、唇でたくさん扱いた。ここが、義信さんの気持ちい、とこ。
「ん」
教えてもらったところを、口を窄めて締め付けながら、たまに舌も使って先端を舐めたり。あとは口に含んだまま手を使ってしごいて。それから、唇で食んでみたり。
「上手……」
褒められるとすごく嬉しくて。
「汰由」
たくさんたくさんしゃぶりついた。
義信さんのはとても大きくて、でも、できるだけ口の中で気持ち良くなって欲しくて、涎が溢れるのもかまわず。何度も、頭を動かして、手も動かして、二回目のフェラに夢中で舌を這わせた。
「汰由」
もっとしたいのに。
「あっ……」
もっと、義信さんのしゃぶっていたいのに。
「汰由」
「あっわっ」
「ベッドに行こう」
びっくりした。抱き上げられるなんて思ってなくて。
「!」
簡単に抱えられてしまうなんて。
「わ……ぁ」
「バスタオル、敷かないと。ベッドメイクをしてくれるスタッフを困らせないように」
「ぁ……うん……っ」
シーツの上にバスタオルを義信さんが敷いてくれた。そしてその上に寝かされて、心臓……もつかな。暴れてる鼓動の音、義信さんに聞かれちゃいそうで。
「汰由」
「?」
「そんな顔しないで」
「?」
どんな顔、してたんだろう。
「初めての君に抑えが効かなくなるから」
「?」
「あんまり興奮させないでくれるかな」
全てが不慣れ。ベッドに寝転がって、義信さんに覆いかぶさられただけで、今自分は脚を開いていいのか、そのままでいるべきなのかと迷うくらいに未経験なのに。
「無理そうなら言うんだよ?」
「ぅ、ン……あ、あ」
「汰由」
「あぁぁ……ン」
「一応、セーブしてあげるから」
膝に手を置いて、割り開かれると真っ赤になってしまう。
「ひゃぁ……ン」
乳首を口に咥えてもらえるとたまらなく甘い声が上がった。
「気持ちいい?」
「あ、ン……ぅ、ん、気持ちい、義信さんの舌がっ」
気持ちぃ。とろける。
「舌、やぁ……ン」
甘く啼きながら、舌の動きに合わせて腰を揺らすなんて、呆れられないかな。
「あ、義信さんっ」
「?」
「くだ、さい」
そうねだって、自分から脚の付け根に手を添えた。添えて、さっきまで掻き出すために指を咥えていた身体を開いて見せる。
「あっ……」
柔らかくほぐれた孔は挿入してもらえるって悦んでいるみたいに熱くて、おかしくなりそうなくらいにとろけている。
「あぁっ……あ……あ」
「っ」
根元までゆっくり全部を挿入されていく。きついけれど、散々撫でられた中はそこまで戸惑うことなく飲み込んでいく。
「汰由」
「あ……ン、すご、い」
「平気?」
「う、ん……へ、き」
頷きながら、そっと手を伸ばして、お腹を撫でた。今、いっぱいに広げられて熱を咥えている孔に触れた。繋がっていることを確かめるように、今、セックスをしていると実感するように、いっぱいに広げられた孔をなぞって、僅かに目を見開いてから、ほう、と溜め息を零した。
「指、と、全然違う」
「……あぁ」
「ずっと、してみたくて」
「……」
「指、とか、でしてみたこと、あるけど、全然、違う、すごい」
すごい。
「セックス、してみたかったの?」
してみたかった。
「う、んン……して、みた、くてっ……あ、ン」
ぐっと腰を突き入られるの、気持ち、ぃ。
「指で、ここ?」
「う、ん……指とか、あと……」
指と全然違う。それから。
「おもちゃ?」
コクンと頷いた。
全然違ってた。一人で想像していたものと違ってた。
熱くて、硬くて、すごい。さっき口でしたあの、義信さんのが俺の中に入ってる。貫かれて、る。
繋がったところいっぱい広げられてる。それを実感するみたいに何度も締め付けて。
「汰由……」
「あ、全然、違、う……気持ち、ぃ……あっ、あぁ、ん、あン」
こんなにしゃぶりつく身体の奥まで、このまま深くまで突き立てられたら、どんなになっちゃうんだろう。
「あ、あ、あ、ン……あ、ン」
喉奥がヒリついて焼けてしまいそうなほど。
「あ、だめ……も、イっちゃいそ」
「いいよ……イッて」
「あ、あ、あ、あぁあっ」
「さっきはできるだけ刺激しないようにって避けて気をつけてたけど、ここ」
「あ、あ、あ、そこ、ダメっ、気持ち、ぃ、義信さんっ」
「今度はたくさん」
前立腺を擦り上げられると、たまらない。
「あ、あ、あン、あんっ」
シーツをぎゅっと握り締めながら、堪えようともせずに、甘い声を突かれる度にあげて。
「あぁン」
「汰由」
「あ、あ、あ、気持ち、ぃ……そこ、気持ち」
初めての行為。
「義信、さんはっ?」
溺れるように夢中で。
「あ、あ、あ、ダメっだめっ、イッちゃう! イッちゃう!」
「もちろん」
ただ、義信さんにしがみついていた。
「すごく気持ちいいよ」
身体の奥でしゃぶりついていた。
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