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第31話 良い子と悪い人

「汰由」  バスタオルを敷いたベッドの上に横になりながら、頭の下に自分の腕を枕代わりに置いて、ちらりと義信さんを見上げた。 「俺、髪が濡れてるから……」  シーツ、濡らしちゃうでしょ? でも、乾かすのもどかしくて、その時間も惜しくて。 「いい子だね。汰由は」  そんなことない。  今、頭の中、覗かれたら、やらしい子って叱られちゃう。  今まで妄想してきた義信さんとの行為を全部見られたら、呆れられちゃう。 「あ……ン」  早く欲しいよ。 「や、ぁ……義信、さぁ……ン」  まだ指だけなんて、切ないよ。 「く、ぅ……ン」  ぎゅっとシーツを握り締めながら、鼻先をそのシーツに埋める。ここで、義信さんが眠るんだって、そう思っただけで奥がキュンキュンする。 「汰由」 「ひゃ……あンっ」 「中が締まった」 「っ」 「ここ、気持ちいい?」  たまらない。 「ぅ、ん、気持ち、ぃ」  お尻を大きな手で撫でられるの。 「義信さんのベッドで、できるなんて」 「……」 「あぁっん、気持ち、ぃ」  四つん這いで、まるで猫みたいに腰を高く掲げてた。その、まるで甘えておねだりをする猫みたいな腰を大きな掌で撫でられて、お尻の柔らかいところにキスをされた。 「ひゃぅっ」  歯、触れるのドキドキする。  ゾクゾクする。もっと触って欲しくて、勝手に腰が揺れて。唇が感度を楽しむように何度もキスをしてくれる。 「やぁ……ン」  指、気持ちいいけど。前立腺をあの指で。  ――汰由、商品整理任せていいかな。メールの返信を済ませてしまいたいんだ。  いつもレジカウンターでタブレットでお仕事をしていた、あの長い指が。 「あ、あ、あ」  今、俺のお尻の孔を抉じ開けて、中の前立腺を撫でてくれてるなんて想像するだけでもイっちゃいそうだから、早く欲しい。 「あ、義信さんっ」 「汰由」 「あっ……」  指、が……引き抜かれて。 「あ……」  欲情が胸の内から溢れて流れ出してしまいそう。 「夢みたいだな」 「……?」 「汰由をまた抱けるなんて」  貴方にもう一度抱いてもらえるなんて。 「バイトさせて欲しいって言っただろ? お金に困ってるって」 「……あ」  ―― あのっ、俺をここで働かせていただけませんかっ?  そう言った。 「だから、収入源を見つけた以上、あのアルバイトはしないわけだから、君をお金で買うこともできない」 「……」 「目の前にいるのに。君はあの夜もあどけなくて可愛かったけど、接していくともっとあどけなくて、一晩だけの男お相手に本名を告げる汰由が危なっかしくて、なのに色気があって、可愛くて、どうしようかと思ったよ」  俺、が? 「もう抱けないのに」 「……」 「君が珍しくスマホで誰かとやりとりしているのを見ただけで嫉妬した」  それって、晶との? 「君が同年代の子と歩いているのを見かけただけで、慌てて店を飛び出したりして」  パン屋さん、の? 「呆れるだろ?」  俺はフルフルと首を横に振ってから、ベッドに手をついている、その義信さんの手首にそっと手を添えた。裸で、大好きな人のベッドに横たわりながら、抱いて欲しくてたまらないって、うずうずさせながら。 「大好き」 「……汰由」 「呆れられるの、俺の方です」 「?」 「貴方が貸してくれたカーディガン、で、したよ?」  そっと、その手首にキスをしながら、少しだけ、ちろって舌を出して舐めてから、まるでペニスにしゃぶりつくみたいにその親指を口に含んだ。 「ひとりでエッチ、したの」 「……汰由」 「ちょっとだけ香水の匂いがして我慢できなかった。あ……義信さんの匂いって思ったら、興奮、しちゃ、あっ……あ」  肩、噛まれるとゾクゾクしちゃう。のけ反って、義信さんの親指をキュッと握り締めながら、片手を後ろに伸ばした。  ヒクついて、欲しがりなそこを見せつけるように、四つん這いで開いて、見せて。 「今も、したくて、ここ」 「あぁ」 「あっ、親指、やぁ……」  くぷくぷしちゃ、やなのに。  もう指じゃないのが欲しくてたまらない。親指じゃ物足りない。 「あ、早くっ」 「ゴム、つけてる間も待てないなんて、やらしくて、可愛いよ。汰由は」 「あ、あ、あ」  ぴたりと押し付けられた指よりも太くて丸くて。 「……あ、入っちゃ、ぁ」 「最高だ」 「あ…………ン、あぁっ」  義信さんの、やっともらえた。 「本当に上手だね」 「あ、あ……やぁ、前、今、触るの、ダメ」  濡れちゃう。 「二回目なのに。挿れられただけで、甘イキするなんて」 「あ、あ、あ、今、ダメ、動いちゃっ、ダメっ」  濡れた俺のを義信さんの大きな手が握って、しごいてくれる。  パチュン、パチュンって。 「あ、あ、あ、あ」 「汰由っ」 「やぁぁっン」  深い一撃に身体を仰け反らせながら喘いだ。 「っ、汰由」 「あ、ね、義信、さんっ」  いっぱいにお尻を広げながら、甘えた声で名前を呼んで。 「興奮、して、くれる?」 「あぁ、すごく」 「あ、あ、あ、あン、あぁ……ン」  覚えてる? 貴方が教えてくれたの。  気持ち良くなるのが上手だねって褒めてくれた。そういう子だと興奮するんだよって教えてくれた。 「嬉しい」 「でも、煽りすぎだ」 「? あ、ああぁぁっ、奥、激し、」 「僕はそんなに理性、きく方じゃないって、あの晩」 「あ、あ、あ、あ、イク、イク」 「何度も抱かれた汰由は知ってるはずなんだから」 「あ、あ、あ、あっ…………イ、ク」 「あんまりやらしい子だと、我慢できなくなる」 「イッ、く…………」  そして、深い一撃に視界で星が瞬いて。 「あっ…………ン」  ゴム越しなのに、達しているのがわかって。 「汰由、好きだよ」 「あぁ……ン」  また、小さく震えながら甘やかな白濁で、義信さんの手の中を濡らしてた。

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