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第39話 淫らで、はしたなくて、いかがわしい

 義信さんの指で、イッた。 「あっ……ン」  指だけで。  気持ち良くて、たまらない。 「汰由」  義信さんの部屋、洗面所にある大きな鏡には、長い指に中を可愛がられて喘ぐ自分がいた。まるで自分に今にもキスしちゃいそうなそんな距離で、イク時の自分の顔、見ちゃった。 「あっ」  指が引き抜かれる瞬間でさえこんなに気持ち良さそうな表情してる。  まだ指、なのに。 「汰由」 「ン」  こんなに気持ちいぃ、なら。 「全部見たい。脱がすよ」 「あ……」  脱がされて、裸になった。腰に巻いていたタオルを解いた義信さんと二人、裸で、鏡の前で。  今から挿れてもらえるって、期待してる。手をついて、後ろにいる義信さんにねだるみたいに、ゴム、つけてくれてる最中のそれを、早くくださいって待ちきれないって顔で待ってる。 「あっ……」 「挿れるよ」 「ぅ、ン」  指の次は。  義信さんの。  もらえる。  ここに、指でたくさん柔らかくしてもらえた身体を、今から。義信さんので。 「あっ、あぁ」  そこに熱の先っぽが触れた瞬間、ゾクってした。身体が期待して、震えて。  すごい。  こんな顔、するんだ。俺って。  欲しそう。自分から腰を高くして、お尻を向けて、硬い義信さんのに自分でも見たことないところを押し付けながら。 「あぁっ」  やらしい顔、してる。 「あぁ……あ、やぁ……ン」  挿ってくる時の圧迫感に鏡へしがみつくようにしていた手の指先がキュッと力んだ。もう片方の手で広げるように掌で鷲掴みにしていた自分の手に義信さんの手が覆うように重なったのが、すごく、気持ち良くて。 「汰由」 「あぁっ」  すごく、興奮、した。  義信さんの指先が食い込む。力強い掌に身体がゾクゾクする。  まるで俺の中、奥までいっぱいに捩じ込もうとするみたいで。 「あ、あ、あ」  中を擦られながら、割り開かれていく感覚がたまらない。 「あぁ、ン」  一度、少し抜けて。 「ぁ、あぁぁぁぁっ!」  奥へ深くひと突きで貫かれて。 「汰由」 「あ、気持ち、ぃ……今の」  そう懇願する自分の顔がひどくいやらしくて恥ずかしい。 「あ、あ、あ」  俯くと、腰をしっかり持たれて、激しく突き上げられた。  その拍子に前のめりになって、恥ずかしいくらい蕩けた顔の自分が目の前にいる。突かれる度に甘ったるい声をあげて、抜かれそうになる度に切なそうな顔をして。 「汰由」 「あぁ、ゃ……あぁ、ン」  鏡の中の自分と目が合っちゃう。 「締まった……」 「あ、あっ」  気恥ずかしさに中がキュッと締め付けて、それでまた義信さんの硬さと熱さにゾクゾクして。  また、締め付けちゃう。 「気持ちいいよ」  そう耳元で囁かれると、ほら、もっと、きつく締め付けちゃう。  肌同士がぶつかる音と挿入の抜き差しにかき混ぜられるローションの音、それから義信さんの突き上げに堪えきれず溢れて零れる自分の媚びた甘ったるい声がすごく、身体を火照らせる。  こんな顔してるんだ。 「あ、あぁっ……ん、激し、ぃ」  セックスしてる時の俺って。 「あぁ、ぁ、ン、イッちゃう」 「ごめんね。汰由の中、すごく気持ちいいから止めてあげれない」  ワガママ、かな。 「あ、あ、あ」  止めて欲しくないのに、止めて欲しい。 「気持ちいい? 汰由、腰、押し付けて」 「あ、あン」  義信さんが後ろから、こんなに激しく俺のこと犯してる。  気持ちいい。 「あ……あぁ……ン」  義信さんに抱いてもらえて、気持ち良くて。 「可愛い顔してる」 「っ、だって」  気持ちいいから、イきたくない。 「汰由?」  だって、イっちゃったら、終わっちゃう。  まだ、こうしてたい。 「そんな顔しないで、汰由」 「あっ……」  義信さんのことが好きでたまらない。欲しくて、たまらない。もっと一緒にいたい。 「帰してあげられなくなる」 「あ」  帰りたくないもの。 「でも汰由は明日も大学があるだろ?」 「ン」  一緒にいたい。もっと、たくさん。  だからイキたくなくて、キュって身体の奥が頑なに我慢しようとする。でも我慢しようとすればするほど、義信さんの形を感じて、気持ち良くて。 「ちゃんと帰らないとね」  やなのに。  まだこうしてたいのに、いきたくてたまらない。 「今度、ちゃんとデート、しよう」 「え?」  でもお店が。 「汰由のいきたいところ、全部連れて行ってあげる」 「あ」 「嬉しい?」 「でも、お店」  背後にいる義信さんが俺の後頭部にキスをして、髪に頬を擦り寄せる。まるで義信さんが年下みたいに、甘えてくれた。 「僕が汰由を一日独り占めしたいんだ」 「っ、ン、ほんと……? デート」 「もちろん」  嬉しい。すごくすごく、嬉しい。 「楽しみ、に、しちゃい……ます」 「もちろん」  奥がきゅぅってなった。彼が欲しくてたまらないですって、なった。 「汰由」 「あ、好き、義信さん」  激しく揺さぶられると嬉しそうに甘い声あげてる。  背後の彼に擦り寄るように身体を預けて、深くまで熱にしゃぶりついて。奥まで、彼でいっぱいになりたい。 「あ、もっと、して欲し」 「っ」 「義信さんっ」  セックスは。  もっといかがわしい行為だって思ってた。  自分の恥ずかしいところを全部晒して、とてもはしたいない行為のように思ってた。だからいつもどこかでいけないことで、悪いことのような気がしてた。  男なのに、同じ男の人が好きなのは悪いことって。  男の人と、したいなんてって。 「汰由」 「あ、あ、あっ」  でも、違ってた。 「汰由」 「あ、ン、義信さんっ」  セックスは、恥ずかしいところで、繊細で、身体の一番敏感で柔らかいところを可愛がってもらえる。一番恥ずかしいところで、恥ずかしいくらいに全部晒して繋げて、気持ち良くなる。  大好きな人に、優しくされて。  大好きな人が夢中になってくれて。 「一緒に、イきたい。義信さん」 「ン、いいよ」 「あン」  肩に優しくキスをされて小さく甘い悲鳴をこぼした。もう、どこをどう触られたって気持ちいい。髪にキスしてもらえたってイッちゃうかもしれない。そのくらい、義信さんにしてもらえるのは気持ちいい。  それと、すごく。 「あ、あ、あっ、イック……」 「っ」 「イク、イクイクイク、あっ」  すごく、嬉しい。 「あ、キス、したい、ン……ん」  好きな人に抱いてもらえるのは、やらしくて、はしたなくて、幸せで。 「汰由っ」 「あ、あ、あぁぁぁっ……」  たまらない。  ひどく淫らだけれど、とてもくすぐったくて、すごく、甘くて気持ちいい行為だって、知った。

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