62 / 91
第62話 恋人
久しぶり、だから。
「汰由」
ベッドに優しく押し倒されながら、義信さんの唇が首筋に触れただけで、肌が快感にゾワリと反応する。
今日してもらえるってとても楽しみにしてた。
今日は触ってもらえるって、嬉しくて仕方なかった。
「やぁ……あ、ぁ……ン」
中を、長い指で丁寧に解されてるだけでイっちゃいそう。あの指にされてるって思うと、ゾクゾクして仕方ない。義信さんの隣でずっと仕事をしている時の彼を見てるから、すごく興奮しちゃう。
丁寧で、優しい前戯なのに。
まるで拷問みたい。
まだ?
お願い。
もう欲しいよ。
って、奥が気持ちいいの欲しさにぎゅうぎゅう締め付けてる。
「あ……義信、さんっ」
快感が辛いくらいにつま先まで痺れさせるから、お尻の孔で物欲しげに指にしゃぶりつく。自分からも腰を揺らしながら背後にいる義信さんへと振り返った。
「も、欲しいよ……お願い……さっき、少しだけシャワーの時に、自分でもした、から、だから」
「ダメ。痛くしたくないんだ」
「やぁ…………ん、も、中、欲しくて、や、だ……お願い、」
切ないって自分の手で下腹部を撫でてから、今、くちゅりくちゅりってイタズラに前戯に翻弄されているお尻の孔へと手を伸ばした。
指、入ってる。
「あ、あぁっ……」
「汰由」
「あ、ん……欲しい、よ」
欲しくて、欲しくて。あの時みたい。
「義信さんっ」
貴方は中に注がれた得体の知れない何を掻き出そうとしてくれているだけなのに、俺はもう疼いて仕方なくて。
あの時も懇願したっけ。
お願いって。
助けてもらったお礼をする、なんて、貴方欲しさに何かないかと理由を掻き集めて、貴方の前に広げてみせた。
「義信さん……の、を、ください、ぁ……ン」
広げて、もしも恋人がいないのなら、特別な人がいないのなら、お願い、なんて言って。普段の俺なら絶対に口にできないことを言ったんだ。
「欲しい、の、この大きいので、貫いて」
嬉しかったのを覚えてる。
貴方はあの時恋人がいなくて、誰のものでもなくて、あの瞬間だけこんなにかっこいい人を独り占めできるって嬉しくなったのを覚えてる。
「あ……ん」
指を抜かれただけで、星が瞬くの。ずうっとイッてるみたいに気持ち、ぃぃ。
「汰由」
「お願い……」
そっと四つん這いから起き上がって、柔らかくなった孔を自分の指で撫でて。もう解れて、貴方の太くて硬いのが挿れられるのって見せつけるようにヒクヒクしてる孔を自分で広げた。
「欲しがりで可愛いな」
「あ、ン」
肩に、歯を立てられただけで、前、さっき一度イッちゃったはずの自分のから、わずかにピュッて溢れちゃう。
「ここに……」
そして、自分の指にさえしゃぶりつくいやらしい孔に突き立てて欲しくてたまらない。奥までこの熱でいっぱいになりたい塊にキスをした。
「義信さんの、欲しい」
「汰由のだ」
あ、ゾクゾクする。
「全部、汰由のだよ。だから、自分から挿れて」
「ん」
正座して、義信さんの足の間にちょこんと座りながら、甘えるように小さくてささやかなキスを一つしてから、独り占めしていいって言ってもらえた貴方に抱きつく。
俺よりもずっと逞しくて身長のある貴方を押し倒して、その上に跨った。
「あっ」
そして、そのまま。
「汰由」
「あ、あ、あ、あぁっ……」
大きくて、挿れただけでいっぱいになる。苦しいくらいに貴方で満たされるのが嬉しくて。
「っ、きついだろう? 汰由」
「ン、ぁ、嬉しい」
あの時は、一晩だけでもこんな人にしてもらえて夢みたいって思った。嬉しいって思ったよ。
「あ……ン、俺、あの時、すごく嬉し、ン……かった」
「?」
「俺の初めて、もらってもら、えて……ぁ、ン」
今も、嬉しい。
けど。
「あぁ、ン」
あの時とは違う。
恋人はいますかって言ったら、貴方はいないよって優しい声で答えたけれど。
「あぁ、あ、あ、ン」
「汰由」
今なら、その恋人は――。
「あ、あ、あ、や、義信さんは、動いちゃだめ、イッちゃうっ」
「汰由の中、すごく気持ちいい。動くななんて意地悪だな」
「ひゃぁぁ……ン、あ、あ、あ、あ」
腰を自分から揺らして、太い杭を身体の奥まで突き立ててから、ずるずると引き抜くように、腰を浮かす。
「あぁぁぁっ」
そこから一気に深く沈める瞬間、義信さんの大きな手が俺の前で濡れてるそれを握って扱いてくれて、また甘イキしちゃう。
「あっ……ン」
気持ちいい。
「あぁっ……」
今、軽く達して、また汚しちゃった義信さんの手が薄っぺらい俺のお腹を撫でてから胸を撫でて。その掌に引っかかるくらいコリコリに勃ってる乳首をキュって抓った。
「やぁぁ、あ、それ」
「っ」
気持ち良すぎて、お尻がキュンキュンしてる。
「あ、やン、あ、ン」
乳首を今度はカリカリ引っ掻かれて、切なくて溶けちゃいそう。カリカリってされるの好きでたまらない。
「義信さんっ」
全部気持ち、いぃ。
「あンっ……義信さんっ」
ど、しよ。
「あぁ、ンっ」
「汰由」
好きで、おかしくなっちゃいそう。
「あ、や、乳首、イッちゃう」
「見せて」
「あ、あ、あ」
自分から逞しいペニスで中を擦って、乳首を可愛がられる快感に浸りながら。
「あ、あ、あ、ダメ、イク、義信さん」
夢中になって繋がった快感を味わった。
「あ、あぁぁぁぁあ!」
お尻が切なげに義信さんのペニスにしゃぶりついた瞬間、乳首を両方、指先に摘まれて。
「あっ……」
達した。
「あ……ン」
ぴゅくって弾けて飛ばした白が義信さんの逞しい腹筋を濡らして。
「やぁ……ン」
「ごめん。汰由。休憩させてあげられない」
「あ、今、俺っ……ン、ン」
イッたばかりなのって言おうとした唇に、起き上がった義信さんが首を傾げながらキスをする。深く舌を差し込まれて、言葉も乱れた呼吸もかき混ぜられて。
「ひゃぁっ、あ、らめ……あ、あ、ぁ」
そのキスで濡れた唇に敏感すぎてもっと気持ち良くなりたそうに赤くなった乳首を舐めて、噛んでもらいながら、今度は俺がベッドに押し倒された。
「汰由」
嬉しくて溶けちゃいそう。
「あ、あぁっ……いま、動いちゃ、イッちゃうっ」
――あの……お礼、したい、んです。
「あ、あ、気持ち、ぃ、あ、義信さんっ、イク、も、あっ……」
――ダメ、ですか?
「あ、あ、奥、激し、ぃ、の、気持ち、ぃ」
――恋人、いますか?
「あ、義信、さんっ」
――いないよ。
「汰由、好きだ」
貴方に俺の初めてをもらってもらえて、あの時、嬉しくてたまらなかった。こんなかっこいい人と一夜だけでも相手してもらえて、最高だって思った。
「汰由」
ねぇ、信じられないよ。
そんなかっこいい人の恋人になれたの。一夜じゃなくて、この人のことを独り占めしていいって。俺のものって言ってもらえたの。
「あ、ン、義信さんっ、もっ、イク、イク、イッちゃう」
「っ」
「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁ」
最後、激しく奥まで貴方でいっぱいになりながら、ギュッて抱きついた。足を絡めて、腕を絡めて、恋人の甘くて濃くてやらしいキスをしながら。
「あ…………ン」
大好きでたまらない恋人にしがみつきながら。
「大好き」
そう囁いて、きゅん、って義信さんに身体でも気持ちを伝えた。
ともだちにシェアしよう!