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セクシーメリークリスマス編 1 メロメロですね。
今日は一番のいち推しコーデにしてみたんだよね。
淡いピンクのニットなんて、僕には似合わないように思ったけれど、でも義信さんがすごく似合うって褒めてくれたから。それに合わせて、深めのグレーのパンツはシルエットゆったりめにして。
ピンクとグレーって、すごい相性良いと思うんだ。
って、これ、聡衣さんの店舗ブログでコーデ紹介してる写真見て、そう思ったんだけど。
今日はその憧れの聡衣さんと会えるから。
「汰由、帰りは迎えに行く」
「でも、あの」
「迎えに行くよ。一人で帰すなんてダメに決まってる」
別に、大丈夫なのだけれど。
だって、蒲田さんが予約してくれたお店、駅から歩いて五分だし。駅まで蒲田さんたちだって行くだろうし。
「僕が迎えに行きたいんだ」
義信さんが、もうなんというか、溜め息しか出なくなっちゃうようなスーツ姿でにっこりと笑ってくれた。
普段ニットとかラフな格好が多いから、スーツ姿ってすごくレアで。
反則だよね。
カッコ良すぎてさ。
今日は、義信さんがお仕事の打ち合わせも兼ねた食事会に行ってしまう。フランス料理って言ってた、ワインが美味しいらしいけれど、カクテルもたくさんあるみたいだから、今度デートに行ってみようかって。その偵察も兼ねて、なんて笑っていた。
そのタイミングで、聡衣さんがこっちに来てるらしくて。蒲田さんも都合がつくからって、三人でご飯をすることになった。
すごくすごく楽しみだけど。
ちょっとだけ、いいなぁなんて思ったりして。
だって、こんなかっこいい義信さんとディナーデートとかできたらいいなぁって。
「でも、楽しんでおいで」
「はい!」
「でも気をつけてね」
悪い男に引っかからないように、なんて言ってもらえた。
「はいっ」
本当は、注意されたのだから、大丈夫ですって言ったり、そんなこと心配しなくて大丈夫ですよって安心させたりするんだろうけど、義信さんにそう言ってもらえるのは嬉しくて、つい、元気に返事をしてしまった。
変だよね。
わかってるし。
義信さん以外なんて目に入らないし、もちろんついて行ったりもしないし、全然無視だし。
でも、そうやって言ってもらえるくらい、俺って……なんて。
「笑ってる?」
「笑ってないです!」
「そう?」
微笑んで、俺の頬をそっと優しく手の甲で撫でてくれると、気持ちがふわりと柔らかくほぐれていく。
「義信さんも、たくさん美味しいもの食べて来てくださいね」
「あぁ、そうだね」
ほぐれて、ほろほろで、夜の数時間、会えないだけでもなんだか寂しいから、さっきは平気って思ったけれど、やっぱり迎えに来てもらいたいと思ってしまった。
だって、そうしたら、今日はまだ夜にもう一度会えるから。
だからお迎えに来て、って思ってしまった。
悪い男に引っかかるわけないよ。
俺の頭の中、大好きな義信さんのことでいっぱいだし。
それに、今は勉強も大変だし。あと、やっぱり、義信さんにたくさん褒めてもらえる恋人になりたいから、ファッションとかも詳しくなって、素敵な大人になりたいし。
「わ、ぁ」
聡衣さんと、蒲田さんとは、レストランで待ち合わせをしてた。
そのレストランの最寄り駅で降りると、駅の前が、クリスマスイルミネーションでキラキラって輝いていた。
キレー。
そう
胸の内で呟いて、それから、写真に撮ってみた。
「……」
うーん。
なんていうか。
不思議だよね。
スマホに撮っても、このキラキラピカピカとしたイルミネーションの素敵さって映ってない。
もっとすごく綺麗なのに。
光が溢れてて、駅前で一人なのに、わぁ、って声が出ちゃうくらいなのに。
駅前、イルミネーションが素敵ですって、義信さんにメッセージと写真送りたかったなぁ。今頃、もうレストランでステーキとか食べてるかな。フランス料理ってステーキ出ない? どうだろ。ご馳走たくさん食べて来てくださいねって、言ったらにっこり笑ってた。俺はそんなことを口で言いながら、本心は真逆で。義信さんと僕の方が一緒にいたいのに、とか思ったりして。けどそのくせ、聡衣さん達と一緒にご飯できるのも嬉しくて。
「!」
その時だった。
――もう、レストラン? 迷いそうだったら、佳祐に連絡してみるといいよ。
義信さんからだった。
離れてても、こうして気遣ってくれるのがたまらなく嬉しくて、きっと、通り過ぎていく人たちは変な奴って思ったかもしれない。スマホをじっと見つめながらニヤニヤしてたから。
――はい。ありがとうございます。地図あるから大丈夫です。駅前、イルミネーションがすごい綺麗です。
そう、綴って、送信した。
――イルミネーション、じゃあ、今度、見に行こうか。店が休みの時にでも。
「やった!」
思わず、声、出ちゃった。そしてすごくすごく元気に「はい!」って送ってから、大喜びしているうさぎのスタンプを送った。
そのメッセージにすぐに既読のマークがくっついた。
レストランかな。
車の中かも。
でも、俺からのメッセージを見てくれてる義信さんが、今、この画面から、ピピピッて電波を飛ばした向こうの、どこかのスマホの画面の向こうにいるんだと思うと、嬉しくて、楽しくて。
――じゃあ、行ってきます。お迎え、の時、また連絡します。
あとでまた義信さんに会えることの嬉しさの方が膨らんで、蒲田さんが教えてくれたレストランに向かう足取りは、スキップみたいに弾んでた。
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