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セクシーメリークリスマス編 3 待ちぼうけ
イルミネーション、綺麗だなぁ。
いいなぁ。今度、どこかイルミ有名なとこ行けないかなぁ。人多すぎるかなぁ。かっこいい大人とその横に、子どもっぽい学生が並んでたら、どんな関係? って思われないかなぁ。
でもいいなぁ。
あ、ここのイルミ、キレー……。
スマホで検索してみたら、あっちこっち、写真付きでオススメのクリスマスイルミネーションスポットが紹介されていた。それからそこの近くのレストランも。
イルミネーションって平日だってやってるもんね。お休みの日に、誘ってみようかな。
っていうか、誘う、で思い出したけど、セクシーな格好でメロメロって、やっぱ、あれ? 勝負下着っていうか、だよね。多分。えー、どんなのがあるんだろ。けど、こんな駅までそんなの検索できないもんね。後ろから見られたら大変だから。けど、今度調べなくちゃ。義信さんを誘惑できちゃうような、メロメロにさせちゃえるような、セクシーなのがいい。どんなのがあるのかも分かんないけど。
そんなことを取り留めもなく考えながら、義信さんが迎えに来てくれるのを待ってた。
少しだけお酒飲んだからか、ふらりふらりと揺れながら。
もう聡衣さんは久我山さんのとこ着いたかかなぁ。今日はホテルに泊まるって言ってた。年末だから高いし、ただのビジネスホテルでいいのに久我山さんが高いホテル取っちゃって、って、ちょっとお小言、言ってたけど。楽しそうに帰ってた。
蒲田さんは、どうだろ。もう河野さんと一緒に暮らしてるんだよね。
はぁ、って息を吐くと、真っ白になるくらい。
やっぱ夜だと寒い。
昼間、お店の窓から入っていくる日差しはあったかくて、立ち仕事なせいなのかもしれないけど、ニット、しかも厚手のだと汗ばんじゃうこともあるけど。
「……」
そろそろ、かな。
食事会終わりました。でも、俺ちゃんと帰れますよ。まだお食事してるとこ、悪いし。
そう大人ぶってメッセージ送った瞬間、待ってて、迎えに行くからって返信がきた。
もう、来ちゃうかな。
あったかいお茶とか買っておく?
冷えちゃったらやだし。
けど、もう来てくれるかもしれないし。
なんて、コンビニをチラチラ見ながら、考えてた。
っていうか。車でお迎えってことは、義信さん、お酒飲んでな――。
「!」
その時だった、義信さんの車が現れて、スーッと滑るように俺の手前に止まった。
「待たせたね。ごめん。思ったよりも混んでた」
「い、いえっ、全然」
急がなくちゃ。
大慌てで助手席に座ると、ホッとする温かさと、義信さんがオフの日に本当にさりげなく、わからない程度に微かにつけている香水の香りが鼻先をちょっとだけ掠めた。
「おかえり」
「た、ただいま」
「楽しかった?」
「はいっ、って、あの、義信さん、今日、お酒飲まなかったんですね」
なんかそのへん、気が付かなかった。
車で迎えに来てくれるってことは、お酒飲んでない。ワインが美味しいお店って言ってたのに。
「美味しいワインよりも、汰由のお迎えの方が大事だろ?」
「そんなっ、俺っ」
「寒かったのに、待たせてごめん」
「!」
優しく俺の頬を撫でてくれる手がすごく暖かくて、冬の寒さにギュッと固く縮まった気持ちが、ふわりと柔らかく解けてく。
「聡衣くん、元気だった?」
「あ、はいっ。とっても」
「いつもオンラインミーティングで様子は伺ってるけど、忙しそうだったから、体調大丈夫かなと思って」
「元気でした!」
聡衣さんって、笑うととっても華やかで、対面しているこっちの気持ちも華やぐから。今日はずっとふわふわと舞い上がっておしゃべりしてた。少し、はしゃぎすぎたかもって思うけど。
「たくさん話せた?」
「はいっ」
「それはよかった」
コーデのこと色々聞けたし。やっぱりセンスいいなぁって思ったなぁ。
「佳祐は……まぁ」
「一昨日、お店に来てくれましたもんね」
「手袋もいいと思ったけどね」
「タイピンも素敵でしたよ」
義信さんのお店で、河野さんへのクリスマスプレゼントを選んでる蒲田さんは、可愛かったなぁ。今日もすごく可愛かった。帰り道、ちょっと難しい顔してたけど、何か考え事してたみたいだし。
あの人のスーツの着こなし方もすごく素敵。憧れる。
「汰由はたくさん食べた?」
「はい!」
「お酒は?」
「ちょっとだけ。でも、俺は全然。聡衣さんたくさん飲んでました」
そう言ったら、義信さんが、あはははって大きく笑った。
「……少し」
蒲田さんのスーツも素敵だけど。でも、一番、憧れるっていうか、素敵なのは、やっぱり義信さんだ。
スーツ、めちゃくちゃかっこいいなぁ。
写真、撮らせてもらえばよかった。
モデルみたい。
撮らせてくれるかなぁ。恥ずかしいって言いそうだなぁ。
「寄ってく?」
「! はいっ」
ちょっと、だけだし、酔ってないって思ったけれど。
「元気な返事だ」
やっぱり少し酔ってるのかもしれない。返事の声はとても大きくて、もっと背伸びがしたいはずなのに、大はしゃぎの子どもみたいになっちゃったから。
あまりにも元気な返事に笑われちゃったけど、でも、その義信さんの笑った顔が素敵で、キュンってして、その身体が、気持ちが、義信さんに今すぐくっ付きたいって我儘してしまいそうだった。
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