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セクシーメリークリスマス編 6 君をメロメロに
いいな。
見てみたいな。
いつも余裕のある義信さんがギリギリって感じなとこ。
余裕なくて、切羽詰まってるとこ。
俺に。
「わ……すご……」
メロメロなとこ。
「これは……ちょっと……びっくりさせる、よね」
こんなセクシー下着とか俺が身につけたら、なってくれるのかな。メロメロに。ギリギリって感じに。
「えー……でも、ここまではやんないほうがいいよ、ね?」
余裕なくなってくれるかな。
「う、うーん、このくらい?」
見つけたセクシーランジェリーのサイトの下着を見まくって、見まくって、これ系のサイトのこと、なんか大体見尽くしたくらい。
やらしい動画とかに出てきそうなのとか、ちょっと笑っちゃうようなのとか。クリスマス時期だからかな、そういうシーズンっぽいのとか、色々見つけた。
えっちを通り越して、卑猥なのとか。義信さん、引いちゃいそうで、流石に、それはって思うけど。
でも、大人な義信さんをメロメロにするにはこのくらいの刺激がないとダメなんじゃない? とも思ってみたり。
色々見すぎたせい。
「うーん……」
どれにしようか余計にわかんなくなって、今、絶賛、迷走中。
もうすぐクリスマスなのに。早くしないとなぁ。
セクシー系か可愛い系か。
「うーん」
あとはやっぱり。
「……」
義信さんの好みを探ってみなくちゃ、だ。
いつもどおり、大学を終えて、アルコイリスでのアルバイトに、スキップしたくなっちゃう気持ちで向かった。
普通はアルバイトとか、ダルかったりするみたい。けど、俺は義信さんに会えるから、このアルバイトがすごく好き。あと、洋服のセンスとかないかもだけど、でも、ここでのお仕事そのものもすごく好き。
お客さんと話しをするのも。服を一緒に選んだりするのも、すごく楽しくて。
「お、疲れ、さま、です……」
「汰由こそ、お疲れ様」
「……」
「どう? 汰由、気に入った?」
そう言いながら、義信さんが、いつもよりしっかりセットした髪をかき上げようとして、セットしていたんだったってその手を止めて笑った。
「び、びっくりしました!」
だって、義信さんがシャツにベスト、で、スラックス、なんだもん。
普段はラフなニットなのに。
「汰由がスーツ姿気に入ってくれてたから、ちょっと、汰由にアピール」
にっこりと笑ってくれる。けど、はにかんでて、少し照れくさそう。
俺が気に入っていたから、シャツにしたんだって。かっこいいって言ったから、ネクタイしてくれたんだって。でもでも、そのベスト、反則だよ。スーツもすごく素敵だったけど、シャツにベストなんてもう。
「あらぁ、今日は英国紳士がいらっしゃるの?」
その時だった。常連さんのマダムがにっこりと微笑みながら、お店の扉を開け、カランコロンと、乾いた鈴の音がした。
「こんにちは。汰由くんがこのくらいの時間からならいるから、来たのだけれど」
「こ、こんにちはっ」
マダムが俺ににっこりと笑ってくれる。俺の大好きなお客さんの一人。海外に住んでたこともあるらしくて、色々な面白いお話をしてくれる人。たまに、お客さんとアルバイト店員なのに、ずっと長話しちゃったりもして。
「今日はね、お客さんじゃないの」
「え?」
「シュトーレンを焼いてみたのよ。孫たちに作ってあげようと思ったのだけれど、もう何年も作ってないから」
素敵な真っ赤な紙袋に、金色のリボンがくっついていた。
「お二人に実験台になっていただこうと思って」
「!」
「それは、ありがとうございます」
「ふふ。美味しいかわからないわよ? 昔、教わってよく作ってたのだけれど。硬すぎたらごめんなさいね」
「いえいえ」
「英国紳士さん」
マダムがその紙袋を俺に手渡すと、素敵ね、とウインクしてくれた。
コクコクと頷いて、素敵ですよねって、前のめりで答えすぎちゃって、ちょっと笑ってる。
「あとで二人でいただきます」
「今日はこのあと、用事があって、これだけ渡しに来たの。今度ゆっくりクリスマスプレゼントを汰由くんに選んでいただきたいから、またその時、味の感想も教えてね」
「は、はいっ、是非」
そう元気に答えると、マダムがふわりと微笑みながら、また乾いた鈴の音を響かせながらお店を後にした。
「すごい、いただいちゃいましたね」
「そうだね。ありがたい。あとで、お店が終わった後、少し時間ある? あるなら」
「ありますっ!」
こういうとこ、まだまだだなぁって思う。
つい、元気に前のめりで返事をしちゃうとこ。子どもっぽくてさ。ほら、義信さんも、目を丸くして、じっと見ちゃう。そしていつも、ふわりと微笑んでくれる。
「じゃあ、一緒に食べよう。汰由のお父さんとお母さんの分を切り分けて、持って帰るといい」
「いいんですか?」
「もちろん、ただし」
「?」
「お母さんたちにも感想聞いておくように」
きっと、俺って、義信さんが付き合ってきたどの恋人よりも子どもっぽいんだろうなぁって思う。
「はいっ」
だから余計に思うんだ。
「良い返事だ。じゃあ汰由、今日は品出し頑張って」
「はいっ」
もっと大人っぽくなりたい。
義信さんがメロメロになっちゃうくらい。
もっと色っぽくなりたい。
義信さんが余裕なくなっちゃうくらい。
そのくらい、義信さんを夢中にさせたいって、いつもずっと思ってる。
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