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セクシーメリークリスマス編 10 一番遅いクリスマスプレゼント

 チキンにサラダ、ピザとケーキ。  義信さんはフルコースじゃないけれどって言ってた。  でもどんなフルコースよりも美味しかった。  二人っきりのクリスマスパーティーはすごく楽しくて。スパークリングワインって、ワインより飲みやすくてびっくりした。  ちょっと飲みすぎたかも。義信さんとちょうど半分こ。普段、ワインを義信さんが飲んでる時、一緒に飲ませてもらうけど、何度飲んでも、グラス一杯で充分って思っちゃうのに。  だから、今、酔っ払ってる。 「大丈夫、かな……」  きっといつもの俺だったらこんなの恥ずかしくて断念してたかも。 「えっち……かな……」  お風呂に先に入っておいでって笑顔で言ってた義信さんはきっといつものパジャマで出てくるって思ってるでしょ?  けど、着たのはパジャマの上だけ。少しサイズの大きいのだから、これでギリギリ隠せてるけど。ちょっとでも屈んだら見えちゃうくらい。  バスルームの鏡の前で、正面、後ろ姿、猫が自分の尻尾にじゃれるみたいに、くるくると回りながら、何度も確認した。背伸びをしてみて、身体を捻ってみて、横からはどうかなって確認して。  一度大きく深呼吸をしてから、そっと、バスルームを開ける。  キッチンにいる義信さんは俺が出てきたことに気がついてはいるけれど、振り向くことなくキッチンで片付けをしてくれてた。優しい人だから、お風呂に入っておいでって、その間に片付けておくからって。  手伝いますって言ったら、早く、その、俺のこと抱きたいから、って言ってた。  そんな優しい人の背後に、そっと、近づいた。 「汰由、少し水、飲んで」  びっくりしてくれるかな。 「さっき、ちょっと飲ませすぎた。明日二日酔いにならないといいんだけど……」  ワクワクする。  驚いてくれるかもしれない。  誘惑したら喜んでくれるかもしれない。  えっち、な気分になってくれるかも、しれない。  たくさん俺のこと。 「汰、」  抱いてくれるかもしれない。 「水、ください」  背後に俺がいることを感じて話しかけてくれる義信さんが振り返るよりも早く、パタパタと駆け寄って、その背中にギュッと抱き付いた。  うん。酔ってると思う。  けっこう、すっごく酔ってるかも。  だって。 「汰由?」  えっちな下着を身につけて、パジャマの上だけ着て、恥ずかしいけど、でも、それよりも、義信さんを誘惑したいって気持ちの方が大きい。 「……」  振り返った義信さんが、ほら、びっくりしてる。目を大きく見開いて。  ギュッと掴んでいた手を離すと、ちゃんと向かい合わせになってくれた。背が高いから、俺の足元はよく見えなくて、きっとパジャマの上だけ着てるんだって思ってる、でしょ? 「あ、の……」 「誘惑してもらえてるのかな」  ね、きっと、まだ思いもしてない、でしょ? 「どう、ですか?」  心臓が破裂しそうだった。  大きくて優しい手を取って、ギュッと握りながら、真っ赤になってるだろう顔を隠したくて、胸の内に飛び込んで。  手、だけ。  引っ張って。 「……これ」  声、ひっくり返っちゃいそうだった。  腰のところはレースになってるから、きっと触ればわかる、でしょ? 「く、クリスマス、だから」  レースを確かに触った手が、俺の腰をしっかり両手で掴んで、引き寄せた。 「っ」 「すごいな」 「っ、っ」 「くれるの?」  くれる、って、その言い方にまたドキドキしてる。義信さんに俺のことあげるって思うと、くすぐったくて、気持ちに甘い甘いシロップをかけてもらったみたいに蕩けてく。  あげますって、コクンと頷いた。  それを確認した義信さんが俺のことを抱き上げてしまって、大慌てでその首にしがみついた。片手で俺のこと、もう片方でさっきグラスに注いでくれた方じゃなくて、ペットボトルの方の水を持って、寝室へ向かってしまう。  びっくりして「わ」って小さな声をあげると優しく笑ってくれて、真っ赤になってる俺にキスをしてくれた。抱き抱えながら、下から覗き込むように。 「んっ」  触れるのじゃなくて、絡まるキス。それからまた、今度は嬉しそうに笑ってる。 「水、ベッドで飲もう」 「は、ぃ」  ドキドキしすぎて、心臓止まりそう。  ね、きっと義信さんにも聞こえてる。こんなにぎゅってしがみついてるから。破裂しそうなくらい、騒がしい心臓の音、聞こえてる、でしょ? 「汰由」 「っ」  貴方のこと、たくさんたっぷり誘惑しようとした。  少しでも貴方のこと。 「困った」 「?」 「すごくはしゃいでる」 「……」 「どうしようか」  虜にしたくて。 「義信さん」 「?」 「喜んでもらえて、嬉しい」  だから、本当に困った顔をして、けど、すごくしっかりと抱っこしてくれる義信さんの心臓もドキドキしてくれていて、今。 「メリー……クリスマス」  寝室の時計を見たら、そろそろ日付が変わるところだった。  きっと誰よりも一番遅くに開けたクリスマスプレゼントを受け取ってもらえて、嬉しくて、幸せで、ギュッと首にしがみついたまま、俺からも丁寧に口付けた。  世界で一番やらしくて甘いキスになるように、舌先を貴方の舌に丁寧に絡ませて、蕩けた吐息を零した。

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