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セクシーメリークリスマス編 13 カエルは帰る
最高のクリスマスだったなぁって夢見心地で目を覚ました。
そして、スッキリとした目覚めに見つけたのは大好きでかっこいい義信さんの寝顔。こっちを向いて、スーって寝てる。
わぁ。
すごい。
睫毛、数えることだってできそう。
眉毛もキレイだなぁ。
寝息、気持ち良さそう。
触ったら起きちゃうかな。
唇、ちょっと開いてるのが、なんだか可愛い。
あ。
何か夢の中でしてるのかな。今、きゅっと口一瞬閉じた。
「……」
クリスマス前はとても忙しそうだった。俺も、ギフトが多かったから忙しかったけど、経営している義信さんはもっとずっと、うんと忙しそうで、俺を送ってくれた後も戻って仕事をしてる日がいくつもあったくらい。
だから、疲れてるよね。
すごくぐっすり眠ってる。
でも、昨日の夜はすごかったなぁ。
すごく激しくて。
すごく――。
――汰由っ。
気持ち良かった。
俺、堪えきれず何度もイっちゃった。ゴムとかしないでしてもらえることは滅多になくて、本当に本当に特別な時だけで。すごく嬉しかった。
あと、蕩けちゃいそうなくらい激しいけど優しく激しくて。
ゴム越しにじゃなく直に感じる義信さんの熱に何度もイった。
――汰由、もう一回。
――あっ、待っ、義信さんっ、今、俺っ。
――待てない。
「っ、っ、っ」
ぎゃあああ、
待てないって言われちゃった。
すごい、今、思い出してもドキドキする。
すごく強く抉じ開けられて、腕をしっかり持たれながら、後ろから攻め立ててくれる時の荒々しい呼吸とかも。
あと、あと、中でイッたはずなのに、硬いままのそれに続けて犯してもらえたりとかも。
真正面で抱き合って、貫かれながら、乳首を噛まれて、俺、それだけでイッちゃった。
――汰由。
そう囁かれると中がきゅぅンって締め付けちゃって。
――素直で、可愛くて、やらしい身体だ。
そんなことを言われては、また、締め付けて。
イかされて。
――イクよ。
そう呟く低い声がセクシーで溶けちゃいそうだった。
気持ち良くて、おかしくなっちゃいそうだった。
腕に抱いてもらえると心地良くて、ずっとこうしてたいって心から思った。
「……義信さん」
「……」
本当に疲れてるんだ。案外、パッと目を覚ますのに、今日は名前を呼んでも起きないなんて。
だから、ちょっとだけ手で頬に触れてみた。
「!」
起き。
「……ゅ」
てない。
起きてない。
けど。
「ふ……」
「!」
わああああ、あ。
寝てる? よね?
でも、まるで起きてるみたいにくすぐったそうに小さく笑って、それから俺のことを抱き締めて、引き寄せてる。
本当に寝てる?
あの、本当は起きてる?
寝てるのに優しく俺の頭を撫でて、髪を指ですいて。
「……」
けれど、寝てるっぽい。
すごい、眠りながら、俺がここにいるのわかってて、それで、頭撫でて、当たり前みたいに俺のこと引き寄せてくれる。
ねぇ、こういうのすごい嬉しい。
寝てる時まで俺のこと可愛がってくれるなんて、嬉しすぎて。
「ふふ……」
つい笑っちゃった。
けれど、それでも起きることのなさそうなお疲れ様な無防備な寝顔にキスをして、俺ももう少し寝ちゃうことにした。だって、どっちにしろ、今日は多分一日のんびりベッドの中だから。昨夜の激しかったセックスの余韻がすごくて、きっと。
溺愛が余っちゃうくらいの彼に一日ここで甘やかされて過ごすことになるだろうから。
「寝癖、すごいね」
「!」
お昼近く。朝ごはんとお昼ご飯がまぜこぜな食事をリビングのソファのところでしていたら、義信さんがそう言って頭を撫でてくれた。
「……ふふふ」
「?」
俺が笑うとちょっと不思議そう。
普段だったら寝癖があると、恥ずかしいとこを見られちゃったって、俺が慌てて直そうとするのに、今はしなかったから。
「はい、寝癖です」
「?」
だってこれ、義信さんのせいだもの。
義信さんが俺のこと離さないで頭を撫でながら抱き締めて眠っちゃったせいでついた寝癖だもん。だから恥ずかしくなくて、むしろ嬉しい。
「汰由、これ」
「?」
「クリスマスプレゼント」
「わ!」
ラッピングはしなかったんだと笑って、俺の手の中に木製の可愛いカエルがくっついたキーホルダーがころんと転がった。
「指輪は、汰由が大学卒業してから」
「!」
「今はまだ親御さんと過ごす時間も大事に、もちろん、僕と過ごす時間も大事にして欲しい」
そんなの、決まってる。義信さんと一緒にいられる時間が一番、何より、大好きなのに。
「で、これはここの合鍵をつけて」
「!」
「プラス、カエルのキーホルダー」
「…………?」
「カエル……」
はい。
「かえる」
はい。
「……あ!」
「あぁ、やっぱりやめておけば良かった。大人で紳士って汰由に思ってもらえてるのに、これはさすがに子どもっぽかった」
「あ、全然っ全然です! 義信さんはいつでも大人でカッコイイし、紳士だからっ」
帰る、鍵で、ここに。
「あの、えへ」
ここも、俺が帰ってきてもいい場所ってこと、でしょ?
嬉しくて、ニコニコしてた。ニコニコ、ニコニコ。
「……もう少し大人っぽいプレゼントにしておけばよかった」
「めちゃくちゃ嬉しいです!」
笑顔になるに決まってる。仕方がないんです。
「ふふっ」
だって、駄洒落のおまけ付きのカエルのキーホルダーはとても可愛くて、愛らしくて。
照れてる貴方も可愛くて。
照れてる貴方が見られて、嬉しくて。
そんなの笑っちゃうに決まってるんだから。
えへへって笑いながら、真っ赤になってくれた、大人な義信さんの頬にありがとうのキスをして。
「えへへ」
もう一度弾けるように笑ってた。
クリスマスが終わると、あっという間に日本が急に和風に変わる。
さぁ、次はお正月だぞって。
でも、まだ俺は一人、クリスマスの余韻に浸ってて。
「えへへ」
カエルのキーホルダーを眺めてはニヤニヤしちゃって仕方がない。
そんなカエルのキーホルダーに義信さんからもらった合鍵をくっつけて、今日はまたお泊まりで。ずっとニヤニヤしっぱなしだ。
「ふふ」
ありがとうございました。素敵なクリスマスになりました。
そう、聡衣さんにメッセージと、カエルのキーホルダーと合鍵を写真に撮って送ったんだ。いつも素敵なアドバイスをもらえるから、また来年もお願いしますって気持ちを込め――。
「! え、えぇぇぇぇぇっ!」
「汰由っ?」
気持ちを込めてメッセージ送ったんだ。
「どうかした? 汰由っ」
「大変、聡衣さんがっ」
そしたらすぐに返事が来た。忙しくないかなって思ったんだけど。
『クリスマス、楽しかったんだね。俺は、ちょっとそれどころじゃ――』
「汰由?」
「聡衣さんがっ!」
『ないみたい』
そんなメッセージが来て、驚いた俺が手に持っていたせいで、キーホルダーのカエルさんもぴょんって跳ねて、一緒になって驚いていた。
そして、聡衣さんには大事件? 大……なんて言ったらいいのだろう。とにかく。
「大変です!」
とにかく大変みたいです。
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