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ヤキモチエッセンス編 9 良い子、悪い子、可愛い子

 ――本当は汰由の名前も教えたくなかったんだけど、さすがにそれは大人げがなさすぎるなぁって思って。  そう言って、運転しながら義信さんが笑ってた。  でも、名前、苗字しか教えてあげずに、大学の知り合いなのに、同性の恋人がいるってことを教えたりして、結局、大人げないのは変わらなかったって。  義信さんは自分に溜め息みたいだけど。  俺は嬉しくてたまらなかったよ?  だって、あの時、つまりヤキモチやいてくれたってことでしょ?  名前は半分しか教えてあげない。  自分があの子の恋人だから、余計なちょっかい出さないように。  よそにはあげない。  そう思ってくれたってことでしょ?  それに、僕は、ついに見れちゃったってことでしょ?  ―― 僕が知ってる義くんはかなり子どもっぽいので。  そう、蒲田さんが言ってた。子どもっぽい義信さんが。  たまに、自分でもそう言ってる。俺が思ってるよりもずっと子どもっぽいよって、本性を知られたら呆れられるよって。  呆れないよ。絶対に。むしろ。 「あ……ン、義信、さぁ……ン」  舞い上がっちゃうよ。  甘い声で大が何個も何個も付いちゃう大好きな人のことを呼んだ。  結局、映画は観なかった。次にした。気になるドラマの続きもとりあえずまだ見てなくて。晩御飯も、後でにした。  今、俺が欲しいのは、映画デートじゃなくて、ドラマの真犯人でもなくて、晩御飯でもない。 「あっ、ン」  義信さんだから。 「あ、乳首、噛んじゃ、ヤダ」  義信さんの足の間に跨って腰を下ろしてる。今日はね、服、自分の着ないで、こっちを着てって言われた。義信さんの少し大きいサイズのスプリングニット。グレーホワイトで、爽やかで、義信さんのお気に入り。サラサラした生地だから少し日差しの強い日でも心地よく過ごせるし、曇りで肌寒い日もこれ一枚で充分過ごせる。袖も裾も、ずいぶん余ってしかたない、それをダボダボのまま、裸に一枚着てるだけ。  貴方のものって感じられて、たまらなく心地いい。  ヤキモチやきになってくれた大好きな人がね。 「あっ……あンっ」  肌にたくさん、印をつけてくれる。  甘くて気持ちいいキスの印を。  俺が、義信さんのものってわかる印を。 「義信さん」 「?」 「この前も、ヤキモチ、やいてくれたの?」 「……」  この前、増原くんがアルコイリスに来てくれた時。  そう訊くと、なんだか、にがーいお茶でも飲み干したみたいな、とっても難しい数学の問題に頭を抱えてるみたいな、そんな顔をした。ぎゅって口を真一文字にして、眉間にもぎゅって力を入れて、渋い顔。 「汰由がそんなつもりじゃないのはわかってるし、健気で可愛いなと思うけど」  けど? 「あの時は、店の売上は気にしなくていいし、宣伝なんてしないでいいよって言葉が喉のところまで出かけてた」  そう言って、俺のことを引き寄せてくれる。  腰を掴んでくれる指がとても熱くて、ドキドキした。 「大人げないな、本当に」 「ううん。あの、嬉しい」  今度は俺がそう言って、貴方の首に腕を巻きつけて、ぎゅっと抱き抱えた。 「けど、本当に、俺、義信さんだけだよ」 「あぁ、ありがとう」  あのね、本当に貴方の役に立ちたいだけ。アルコイリスは貴方にとってとても大事なお店でしょう? 俺もそのお店の役に立ちたいだけ。まだまだ、全然だけれど。  お手伝いがしたいだけ。 「義信さんにね」  全身で寄りかかった。  それでもちっともびくともしない逞しい恋人に胸を高鳴らせながら。 「良い子って、褒めてもらいたいだけ」  そう囁いた。  本当にただそれだけなんだ。  貴方にもっと好かれたいだけ。良い子って褒められて、可愛がられたいだけ。 「汰由は良い子だよ」 「あっ……義信さんっ」 「たまに困るくらいに魅力的で」 「あぁっ」  クチュリと甘い音を立てて、挿入された指が、中を撫でてくれる。 「努力家で、健気で、一生懸命で」 「あ、あっ、そこダメっ」  何度か行き来して、中を柔らかくほぐしてくれる。  ね? 良い子、でしょ? 貴方が抱いてくれるんだって、大喜びで、中が蕩けてく。貴方の硬いのが欲しいって切なくなって、柔らかくほぐれてく。 「笑うと可愛くて」 「あっ、やぁ……ン」  綺麗だけど、骨っぽくて男の人の太い指が引き抜かれて、寂しくなった。早く、早くって、ほら。 「ベッドの上だと、理性がなくなるくらいに艶っぽい」 「あっ」 「大事な子なのに。この関係をとても大切にしてるのに」 「あ、義信さんのっ、あ、入って……きたっ」  ゆっくり、孔の口が広げられてく。一番、太いところを咥える瞬間がたまらなく気持ちいい。 「たまに、返したくないって思うくらい」 「あ、あぁぁぁっ」  そして、奥を一気に力強く抉じ開けられて。 「汰由が可愛い」 「っ、あ、あぁぁぁぁぁっ」  一番奥に突き立てられた瞬間、ぎゅって、しがみついた。 「あっ……ぁ、ン」 「汰由」 「あ……ン、く……ふぁ……あっ」  達したばかりだから、待ってくれてる。キュンキュンって、貴方の硬いのを締め付ける度に眉間に力を入れて、堪えながら、とろとろに馴染むのを待ってくれてる。  宝物だから。  大事だから。  こうして大事に抱いてくれる。 「ン、義信さん……あっ」 「っ」  待たなくていいって伝えるように自分から腰を揺らした。奥がすごく敏感になってるから、ちょっとでも擦られるとすごくすごく気持ちいい。快感がつま先まで広がってく。おかしくなっちゃいそうなくらいに。 「ン、あっ……ん」  キスも。 「あぁっ、ん、それ、や、イッちゃう」  爪で引っ掻かれる乳首も。 「あ、ああっ、あっ」  肌に食い込むくらいに力強い指先も。 「あ、ン……義信さんっ、お願いっ」  何もかも気持ちいい。  もっとして欲しい。めちゃくちゃがいい。貴方に気持ち良くなってもらいたい。貴方のこと虜にしたい。俺以外なんて、目に入らないくらい、俺にだけ夢中になってくれないかな。  俺が貴方に夢中なのと同じくらい。 「あっン、気持ち、いっ」  好きで好きでたまらないのと同じくらい。 「あ、もっ、イクっ、義信さんっ」 「っ」 「一緒に、イきたいっ、ね、中にも、ちょ、だい」  貴方に好かれたい。 「早くっ、欲しいっ、中を、義信さんで、いっぱいに、して」 「っ」 「中に、出して……っ、あ、あンっ、アンっ……あ、そこっ」 「こんなおねだりの仕方を覚えて」 「う、んっ」  ぎゅうってしゃぶりついた。 「たまに、悪い子だ」  うん。  そうだよ。  だって、俺。 「汰由」 「ン、義信さんっ」  貴方が好きでたまらないもの。 「キスも欲し……ぁっ、ン」  大がいくつも付くくらい、大好きだもの。

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