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40.###

 腹が減った。車に乗せられて1時間ちょっと。どこまで連れてくんだよ。  俺の腹の虫が絶叫し始めた頃、やっと車を停めた。『こっちだよ』つって、素っ気なく店に向かう先生。なんか腹立つなぁと思って、強引に手を繋いでやった。  すげぇビックリした顔してたけど、予想外に振り払われることもなく、そのまま店までガッチリ握ってた。バレたらマズいんじゃねぇのかよ。  まぁ、こんなトコに知り合いなんて居ないと思ったからした嫌がらせだったわけだけど。あっさり受け入れられると、ちょっと恥ずかしいんだよな。  店は全席個室で、あんまり客は居なかった。俺らの他に数組だけ。ひと組、大人数で来ていて喧しいのが向かいの部屋に居たけど、迷惑ってほどではなかった。  どうやら、この店の店員と知り合いらしい。店員は背の高い女の人で、横顔しか見えねぇけどめっちゃ綺麗。けど、店員まで一緒になって騒いでんじゃねぇよ。  て言うか、あれってどういう関係でなんの集まりなんだろ。大人っぽくてデカイ男が2人に、俺と同い年くらいでチャラそうなのが2人、それから中学生っぽい可愛らしいのが1人。え、中学生くらいの子、取り皿に肉山盛りなんだけど。まだまだ乗せられてるし。ちっこいのにめっちゃ食うじゃん····すげ。  店員が注文取り終えた瞬間、ピアスじゃらじゃらのチャラい奴が勢いよく扉を閉めた。だから、あんまちゃんと見れなかったけど、一瞬で分かるくらいアイツらすっげぇ距離近かったな。  なんて、俺がボーッとしてたら、こっちはこっちで先生がアホみたいな量を注文してた。んっとにバカ。  なんか知らねぇけど、すげぇ食いたい気分なんだって。ストレス発散かよ。そこまで食わねぇくせに。  あんま喋る事もねぇし、ひたすら黙々と食べる。先生、あんま喋んねぇもんな。そう言や、しょうもない話って今まで俺ばっか喋ってたかも。  小言は言うけど他愛のない話とかはあんまりしない。静かなタイプなんだと思ってたけど、それも違うみたいだ。  奏斗サンとの事があったり、元々人付き合いは好きじゃないみたいだし、先生ってコミュ障なのかな。いっつも卑屈っぽいし。  つか先生って、よく見たら結構キレイな顔してんだよな。あんまちゃんと見たことなかったけど、奏斗サンとはタイプの違う美形じゃん。どっちかっつぅと可愛い系なんかな。  箸を咥えてジッと見てたら、すっと視線を上げた先生と目が合った。すげぇ静かに目が合うから逸らせなかったんだけど。 「どうかした? もうお腹いっぱい?」 「いや、まだ食える。なぁ、先生ってさ、人と喋んのとかあんま得意じゃねぇ?」 「生徒指導ができる程度には、コミュニケーション能力があると思うけど」 「あぁ····、そう言や先生って“先生”だったわ」 「へ····? あっはは、何それ」   お、めっちゃ普通に笑うじゃん。いつも、大人っぽく微笑んだり、ヤッてる最中に厭らしくニヤついてんのしか見たことなかったもんな。  よくよく見りゃ飯食うのもキレイだし、()()()()は物静かで落ち着いてて、無理に空気作んなくていいから居心地いいし。  待てよ、先生ってめっちゃ優良物件じゃね?  気づいた瞬間、俄然手放すのが惜しくなった。つぅかまぁ、一応先生のこと好きって自覚したわけだし。何より、奏斗サンに盗られるのだけは絶対嫌。それだけは有り得ねぇ。  そう思ったら、ほんのちょびっとだけ俺の中で焦りが声を上げた。 「俺さ、夕べ先生に『好き』って言ったんだけど····、それも覚えてない?」  口に飯を運ぶ先生の手が止まって、食わずにそっと置いた。目を伏せたまま何も言わない。めっちゃ気まずいんだけど。  言う気はなかった。だから今朝、先生が夕べの事を覚えてないって言った時は、正直ラッキーって思った。あのままなかった事にしておこうって。  先生の良さに気づいた途端、失くすのが嫌になって焦ったのも要因のひとつ。けど、それだけじゃない。  昨日から先生の事を色々知っていくうちに、今改めて目の前の先生を見てるうちに、ちゃんと向き合いたくなった。先生とも、自分の気持ちとも。  唐突にだけど、昨日伝えたのをなかった事にすんのが嫌になった。それも先生に伝えた。そしたら、涙ぐんで『なんで?』だって。なんでって何がだよ。  隣に移動して、おしぼりで先生の顔を拭いてやる。静かに溢れてくる涙。止まんねぇんだけど。  困った俺は、『しょうがねぇな』って言ってキスをした。  相変わらずキスは下手くそな先生。舌の絡め方がぎこちない。それよか、とりあえずしょっぺぇの。 「先生さ、よくこんなキス下手で奏斗サン怒んなかったね」  と、無神経な一言を放った。言い終えてから“しまった”と思ったけど、先生は恥じらいながら『こんな優しいキス、された事ないよ』とかぬ()かしやがんの、マジでズルくね? 「あっそ。んじゃ、キスはこれから俺が仕込んでやっから覚悟しとけよ」  顔が熱い。バカみたいに真っ赤になってる先生のが移ったんだ。勘弁してくれよ。なんだよこれ、恥ずかしすぎんじゃん。 「····うん。お願いします。キス以外は任せてね」  そう言って、先生はいつもの意地悪な顔をして俺の乳首を摘まんだ。どこでスイッチ入ってんだよ。さっきまでEDに悩むオッサンみたいな、全く覇気のねぇ顔してたくせに。 「ンッ、ぁ····イ゙ぅ゙····」  抱き締めてやろうと思って開いた手が、行き場をなくしてガクガク震える。乳首が千切れそうなくらい容赦なく抓りやがった。(いって)ぇんだよ! 「芯、ごめん。今シたくちゃっちゃった。声、我慢できるよね?」 「バッ··カじゃねぇの····。ンなとこでシねぇからな」 「するよ。僕もうスイッチ入っちゃったから。帰るまで我慢できない。芯も、身体限界でしょ?」  俺が限界なのも、断れないのも分かってて煽ってくる。奏斗サンの事なんか関係なく、性格は元々(わり)ぃんだろうな。それはよーく分かった。 「アンタに仕込まれた所為だろ。ハッ····つぅか、声我慢できる程度しかシないんだ。ガッカリなんだけど」  はぁ····。なんで俺も煽ってんだよ。ここ店だぞ。せめて車まで我慢しろよ。ってダメだ。あれレンタカーじゃん。汚しまくるから絶対マズイじゃん。  ····ん? って、だからここでもダメなんだって。 「先生タンマ。やっぱマジで待って」 「何? やっぱり怖気づいた?」 「はぁぁ!? (ちっげ)ぇよ! アンタとヤッたら汚しまくるから! ここじゃマズイだろ」 「あぁ、そんな事····。ちゃんと汚さないようにできるよ。噴かさないし吐かさないから大丈夫。ここでは、ね」  ここではって、どこでそれやる気だよ。  俺を押し倒して形勢逆転する先生。ハンカチを口に詰められ、乳首を弄ばれる。ちんこは触ってくれないし、自分で触らせてもくれない。  俺が泣くまで乳首を虐めやがんの。思いっきり脇腹噛まれた時は、腹の底から絶叫しそうになってマジで焦った。  先生は、イキまくって蕩けた俺を席に戻し、『デザート食べたら出ようか』つって店員を呼びやがった。噛み痕と乳首に残る痛みで後イキしてんのに、マジで鬼かよ。

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