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第3話 初めてのアルファ。
「なぁ頼むよ!! お願いマキ君、1回ヤラせてくれたら、3万やるから抱かせてよ!! オメガってすごくイイって先輩に聞いたんだ…!」
チャラいベータ男子に、土下座してまで頼まれた時は、マキはその頭を思いっきり蹴りとばしたくなった。
「一回、死んでみれば? それと僕はあんたの見かけも、声も嫌い! その話し方はもっと嫌い!!」
偶然を装い、マキは思いっきり勢いをつけて… 土下座のために地面についた、チャラいベータ男子の手を、かかとでグリグリと踏んでやった。
「痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛いっ! 痛い――っ!!!」
「ああ、見えなかった! そんなところに手があるなんて~!! すごく邪魔、進路妨害しないでくれる?!」
そっぽを向いてマキは適当にあしらう。
もちろん、わざと踏んだのだから、絶対に謝ったりしない。
「ひどいよマキ君… ねぇ、ヤラせてよぉ!! 3万だよ? 3万!!」
懲りずに言い続けるチャラいベータ男子。
「3万?! 僕の値段はたったの3万だって言うのか?! バカにするな!! お前なんか100万出しても嫌だね!! さっさと僕の前から消えてくれ!!」
女子に守られていたおかげで、高校時代にはあまり感じなかった、性的欲望を含んだ視線を… 大学に入ってからマキは、女子を遠ざけることで、ダイレクトに集めるようになっていた。
初めて同年代のアルファに出会った時など最悪だった。
<正直に言うと… ちょっとだけアルファには憧れの気持ちもあった… 最初に出会ったアルファと運命的な恋に落ちて… とかとか? 夢を持ってたりもして…>
そんなマキの夢は、最悪の形で粉々に砕かれた。
「おい! お前オメガだろう? ぷんぷん、フェロモン匂わせて、エロい奴だな!!」
横にも縦にもデカい、見たことの無い男が、下品にニタニタと笑いながら、顔以上に下品な言葉をマキに投げかけた。
マキは初めて会ったアルファに、心からガッカリして、眉尻が情けなく下がる。
「あんた誰? アルファなのは分かるけど、初対面で失礼じゃないか!!」
執拗な視線を避けたくて、マキは人の目が無いキャンパスのはしで、昼食をとっていたことが… ゲス野郎アルファの傲慢を大きくした。
「お前こそフェロモン垂れ流して、オレを誘いまくって! どっちが失礼だよ?」
ニヤニヤと、やらしく笑うゲス野郎アルファ。
「そんなデタラメ誰も信じないさ! こっちは抑制剤を飲んでるから、あんたのフェロモンも感じないし! …て、いうかあんた本当にアルファなの?!」
本当にフェロモンを感じなかったから、ゲス野郎アルファが近づいても、マキは全く気付かなかったのだ。
夢も希望も無いアルファとの初対面に、マキから大きなため息が出る。
「生意気な奴だな!」
顔からニヤニヤ笑いが消え、ムッ… として、自己紹介も無しに大柄なゲス野郎アルファは、体格差を利用し、いきなりマキのうなじをギュッ… とつかむ。
マキの小さな尻の割れ目に、ゲス野郎アルファはすでに硬く張り詰めた生暖かい性器を、グリグリと押しつけて来た。
「止めろ!!」
<うわっ! うわっ! うわっ!! 気持ち悪――っ!!>
嫌悪感でゾゾゾゾゾゾッゾッ… とマキの背中に鳥肌が立つ。
「気が強いオメガだな? オレは結構そういう奴を、無理やりねじ伏せるのが好きなんだぜ?」
あいた方の手でゲス野郎アルファは、シャツの上からマキの胸をなで乳首をつまんで引っ張った。
「クソッ…! 止めろよ!!」
「フフフッ… オレのフェロモンでその気になっただろう?」
顔が小さく見える、細長いマキの首筋に、ゲス野郎アルファがハアッ… ハアッ… と湿気った息を吹きかけた。
カッ… と怒りに火が付き、マキは野蛮な感情に支配され、ギュッと拳を握りしめ…
「だから、抑制剤でわかんねぇって! このゲス野郎!!」
容赦せずマキは、ゲス野郎アルファの張り詰めた性器に、拳を入れる。
力とスピードが足りなくても、性器への攻撃ならじゅうぶんだった。
「うぐっ…!! うううう――――っ… クソッ! クソッ!」
身体をくの字に曲げて、ゲス野郎アルファが股間を押さえてうずくまったのを、マキは冷ややかに見下ろすと…
ゲス野郎アルファの尻のポケットから、学生証を奪い取り、それを持って大学の相談窓口に駆け込みうったえた。
「性的暴行を受けました!! 怖いから早く対処してください!!」
ゲス野郎アルファには、毅然 と対応出来たが… 本当はすごく怖くて、マキの身体はずっと震えていた。
「まぁ!! 何があったか詳しく話してください…」
相談窓口の女性職員は、震えるマキをなだめながら、人目が無い会議室へと行き、親身になって話を聞いてくれた。
自分の味方になってくれた、女性職員の優しさに安心し、マキはその場で号泣した。
元々素行の悪いアルファだったらしく…
それ以来、ゲス野郎アルファに大学で会わずに済んだのは、マキには幸運だった。
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