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第13話 エイジさん格好イイ。
<ひゃあぁぁぁぁ――――っ!!! アルファだから体格に恵まれてる人だろう? とは思っていたけど… 顔まで恵まれてるイケメンとは… なんか恥かしくて真っ直ぐ見れないんですけど!!>
真っ赤になって自分の靴ばかりを見つめるマキに、相模がたずねた。
「マキ、どこか落ちついて話せる場所… 君がたまに言ってたところを教えてくれないか? 確か研究棟の裏だったかな?」
「あっ は… はい!」
慌ててカバンを肩にかけ、食べ終わった食器を持つマキを待ちながら… 相模は、ポカーンとしている隣席の鯉山に声をかけた。
「君が鯉山君だね? 話し中なのに悪いね、マキを少し借りて行くね」
にこやかに大人の態度を見せる相模に、鯉山はいつもの癖で、ウンウンとうなずき…
「ああ… 僕のことは、おかまいなく! さっきまでマキ君、エイジさんから連絡来ないって、すごく落ち込んでいて… 迷惑かけたくないからRINEも送らないって決めてるらしくて… 本人さんが来て、僕は良かったと思っていますから、僕のことは気にせずマキ君といっぱい話してやって下さい!!」
ちょびっと天然の人の好い親友鯉山は、良かれと思って、少し前のグズグズ・マキの凹みっぷりを暴露した。
「ありがとう鯉山君、では… お言葉に甘えて!」
鯉山にはニッコリと笑い、マキにはニヤニヤと笑う相模。
「・・・っ!」
<鯉… 鯉… 鯉… 鯉山君――――っ!!!!! ぎゃああああっ!!!!>
リンゴになら余裕で勝てるぜ! と豪語出来そうなぐらい、マキの顔が赤くなる。
動揺したマキが手に持つトレイの上で、食器がガチッ…ガチッ… ガチッ… と飛びはねて踊りだすと… 背後からニュウ~ッ… と長い腕をのばし、相模はマキからトレイを取り上げる。
「おっとっと…! マキ、時間が無いとは言ったけど、そんなに慌てる必要は無いから、落ち着きなさい」
動揺するマキの背中を、相模は大きな掌でぽんぽんとたたく。
「あ… ごめんなさい! エイジさん!」
思わず顔を上げ、マキは相模の顔を至近距離で直視してしまい… ピタリと静止して視線がはずせなくなる。
少し前まで浮かべていた穏やかな笑みは消え、相模は獲物を狙う肉食獣のようなするどい目でジッとマキを見つめていたからだ。
マキの耳に唇を寄せ、ひそひそと相模はささやいた。
「マキ、もしかして… 発情しているのか?!」
「っ…!」
違う! と言いかけたが… 明らかに自分の身体は熱くなっていて、マキの性器は少し起ち上がり気味だと自覚があった。
素直なマキは、コクリッ… と頷くと… 相模はマキが食べ終わった食器を、足早にカウンターへ戻しに行く。
「格好イイ人だね! アルファ…って、マキ君が言ってた通リ、ベータの僕でもプレッシャー感じたよ!?」
興奮した鯉山が、マキにひそひそと、相模の感想を打ち明けた。
「エイジさんがあんなに格好イイ人だなんて… 何か困る…」
ぽそぽそとこぼすマキに…
「確かに、一緒にいると緊張してそわそわしちゃうね…」
鯉山は、ウンウンとうなずいた。
女子学生も、男子学生からも、学食中の熱い視線を集め… 大人男子御用達のファッション雑誌から抜け出たような、スーツ姿の正統派イケメン相模。
切れ長のするどく光る一重の目で、真っ直ぐマキを見つめながら、颯爽 とカツッ… カツッ… と革靴の足音を立てながら、歩く姿はドラマか映画のワンシーンを見ているようで…
パンツの中が大惨事になりつつある、マキの為に急いでいる人には見えない。
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