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第20話 初恋の末路

<エイジさんの奥さんは、僕と同じ年の時に結婚して、すぐに理想と現実のギャップを埋められずに悩んで苦しんで、心に闇を抱えてしまったのだという… そんな時に一番の親友に裏切られて、死を選んだ?>  話を聞くだけでも、マキは気が滅入ってしまうのに、そんな経験を相模自身が夫の立場で耐えて来たのだ。  それがたった1年前の話である。 《あと5年… 結婚を待てば良かった、私はそろそろどうだ? と妻の両親にうながされ、ちょうど良いから結婚しますと、仕事の都合だけを考えて決めてしまった》 「奥さんの意志とかは関係なく、エイジさんと相手の両親とで、全部決めてしまったの?」 《彼女は何年も前から、そう言い含められていたらしく、何の疑問も持っていなかった》 「それはちょっとひどいね… 洗脳状態というのかなぁ?」 《君の言う通りだよ、私も彼女のその状態が当然だと思っていたから… おかしいと気付かない私自身が、1番おかしかったのさ… 今思えば、私の中のアルファの傲慢さがそうさせた》  …が相模の心を完全に溶かすキーワードだ。  マキが大学を卒業し、社会経験を少し積んだぐらいの年齢、最低でも23歳になるまで、相模には相手にされない。  それが安心して付き合える、相模が望む恋人の基本条件だった。 「分かったよエイジさん! 必ず、僕はエイジさんを口説くからね… 待っていて!!」  マキは相模に堂々と宣言した。  だがその宣言こそ、若くて経験不足のオメガだから言えた、浅はかな子供の夢だった。  相模がフランスへ渡り2年近くが過ぎた頃、マキは不安に支配され、相模を信頼できなくなっていた。  実際に存在するかどうかも分からない、マキ自身が作った想像上の相模の恋人に嫉妬し、相模を疑い憎むようになった。 「そっちには、あなた好みの大人の恋人がいるのでしょう?! あなたは、上手に隠すけどっ!! ああ!! 隠さなくてもこんなに遠いと、僕には分からないか?! 今だって、隣に恋人が寝ていても、僕にはわからないし!!」   感情的になり機械越しに怒りをまき散らすマキに、フランスにいる相模はずっと理性的で大人の対応をした。 《わかったよ、私が嫌いになったのだね? だが、忘れないで欲しい、私の会社に入ると… あの約束だけはしっかり守ってくれれば、私はこれ以上君に干渉しないから》    マキは自ら相模との連絡を絶った。  相模と最初で最後の対面から、あっと言う間に7年の月日が流れ… <僕のバカ!! バカ!! バカ!! バカ!! 自分から言っておいて… ああ、恥かしい!!>  いまだに、自分の子供っぽさを思い出すと、マキは恥かしくて自分に(ののし)るのだ。  ガコンッ!!   会社のエレベーター前に設置された自販機の取り出し口から、スーツ姿のマキは缶コーヒーを取り上げると… 長年飲み慣れたオメガの抑制剤を、その場で喉の奥へと甘い缶コーヒーで流し込んだ。  人がうらやむ大企業と呼ばれる職場に、マキが就職出来たのは皮肉にもオメガ性だったからで… 誰もが就職難の時に、相模の計らいで難無く職に就くことが出来た。  今のところ、そこそこ良い成績を出してはいるから、会社にも上司にも文句を言われたことは無い。 <順風満帆(じゅんぷうまんぱん)、一歩手前と言ったところかな? これで恋人がいれば完璧なんだけどね…>  ハァ―――ッ… とマキは大きなため息をついた。 ※まだまだ続きます(^_-)-☆  最後までお付き合い頂ければ幸いです。  誤字脱字多くてすみません!

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