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第32話 毎朝

 カタンッ… 何かの物音で、マキはふと目が覚めた。 「…んん」  重いまぶたを開き、マキはここ数日で見なれた、豪華なスウィートルームをボンヤリとながめてみる。 <エイジさん… もう仕事に出かけたのかなぁ?>  大きなベッドにマキは1人で眠っていた。  相模(さがみ)と再会してからは、毎朝目覚めるたびに1人だと寂しかったし、不安だったけれど… 今はようやくそれにもなれて、耳をすまし室内に相模がいるかどうかを確認するぐらいの余裕が出来た。  相模と再会して、すでに1週間が過ぎていた。  会社で休憩中に、見知らぬアルファに襲われて気を失い、再会したばかりの相模にそのままこの部屋へ運ばれた。  2人は長い間、離れていたのにも関わらず、自分の(つがい)はお互いしかいないと確認し、このベッドで“番の(ちぎり)り” を結び、無事に伴侶(はんりょ)となった。  ただ、ただ、幸せで… マキは相模のフェロモンの影響を受け、本来ではその周期ではなかったが、発情期に入り1週間ベッドから出られず、体力が続くかぎり相模に抱かれ続けた。  ギシギシと痛む身体をゆっくりと起こし、背中にまくらを2つ入れてベッドヘッドにもたれ… フウウ――――――っ… とマキは長いため息をつく。 <ああ… 今日も出勤できなかった! いくらエイジさんの会社に勤めていると言っても、これではクビになってしまうよ!>  昨日の昼間、医師に往診を頼み、マキは診察を受けた。 『マキ、明日も出社してはダメだよ? 君の身体は私と“番の契り”を結んでから、急激に体質が変化して、体調がとても不安定になっているはずだから…』  往診に来た医師にも同じことを言われ、結局相模の言うことを素直に聞いて会社は、ため込んだ有休を全部使って休むことにした。 <確かに身体は(だる)いけど… でもこれの原因は…>  発情期が終わるギリギリまで、相模がマキを抱き続けたから… 酷使(こくし)した太ももや腰が痛むのだ。 <それに… ペニスの先っちょや、乳首の先っちょも、ヒリヒリするし… これだと服を着たらこすれて痛そうだ> 「ううんんん~っ…」  思わずマキは(うな)ってしまう。  <僕には出社するなと言うくせに、エイジさんは、昨日から、出社しているし!!>  2人が番になってから、相模はマキの発情期に会わせて仕事をこの部屋からリモートでこなし… <それも毎朝、早朝5時ぐらいからエイジさんはパソコン開いて、仕事を始めたかと思えば… 僕を抱いて、僕が気絶するように眠ると… またパソコンで仕事して… 夜だって深夜遅くまで仕事しているし…>  そのうえ、マキが発情期なのに抱かないのはもったいないと言いたげに、夜中もずっとマキを抱いているし。 <エイジさんってば… いつ眠っているんだろう?>  ケホッ… ケホッ… とマキはせき込んだ。  とにかく、マキはよがり狂わされて、さけび声を上げっぱなしだから… 毎日、のどがかれてイガイガするのだ。  カチャッ… とドアが開き、(すき)の無いスーツ姿で相模があらわれ、手にはマキのための甘い桃のフレッシュジュースを持っていた。  目覚めるといつも、マキがのどを痛がるのを知っているから… こうして相模は用意して待っているのだ。  それも、完熟したモモの皮をむき、種を取ってジューサーで作ったばかりの作り置きが出来ない果汁100%ジュース。 「おはようマキ、ピーチ・ジュースをどうぞ!」 「……」  手渡されたグラスを持ち、マキは痛むのどを使わずに、ニコニコと微笑みありがとう… と口だけパクパクして感謝の気持ちを伝えてありがたくジュースを飲む。  たぶん、Lサイズの桃2個分の量があり、ジュースだけでマキのお腹はいっぱいになる。  飲み終わった後のグラスを受け取り、相模はすかさずマキの唇にキスを落とす。    それも朝にしては、ちょっと過激な舌を使ったキスで…  チュクッチュ… チュルチュクッ… チュルチュクチュクッ… チュク…  マキの秘部がちょっと濡れるぐらいまで、揶揄(からか)うようにマキの唇をむさぼった後… 「今朝もマキは綺麗だな… 私は本当に幸運だよ!」  などと外国暮らしが長かった、相模らしい態度でしめくくる。

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