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第3話-1

 戦況が日々悪化しているのは戦地にいれば嫌でも分かった。大本営が今まで発表してきた戦果に偽りがあったことも凛は知った。  沖縄が陥落して、本土決戦が近づいている。凛は故郷の家族を思う。本土決戦ともなれば空襲も増えるだろう。食料や物資も今以上に苦しくなる。そして、沖縄や遠い海の向こうで散っていった同期たちのことも思った。  学徒出陣で戦地に送られた同期たちは、飛行機に乗る訓練をまずさせられたという。上手い着陸はいらない、着陸する必要はないと指導された者もいると聞いた。  特攻。  海軍も陸軍もその戦法を推すしかなくなり始めた。  当初は反対もあったが、一度始めたその戦術は戦況の悪化と共に主流になっていた。特に海軍では神風とも呼ばれ、敵空母に一撃をくらわして散るのが大和魂なのだと教え込まれた。

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