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第3話-2
口に出しては言えないが、凛はこの作戦を恐ろしいとしか思えなかった。そもそも作戦と言えるのかさえ謎だと思っていた。
『敵艦に体当たりして死んでこい』要約すればそういうことなのだ。
戦地に来てからは特に、お国のためというよりも故郷に残してきた家族や愛する人のために戦っている兵士たちを沢山見てきた。大切な人たちを守ろうと、自分の中にある死への恐怖とも戦いながら歯を食いしばっている。
凛のいる基地付近にも敵機はやってくる。さっきまで話していた人が数秒後にはいなくなる。そんな残酷な現実も体験した。
そんな時はいつも清明が側にいてくれた。
あの草はらで、何も言わず隣に座っていてくれる。凛の涙が止まるまで、汗の浮かぶ草いきれの中で、じっと虫の声を聞いている。
ただ。
いつの時でも清明は泣かなかった。
ただの一度も泣き顔を見せなかった。
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