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第5話-1
ずっと考えていた。眠ることなど出来なかった。あの草はらでの告白で、清明を『軽蔑』する感情が凛には全く湧いてこなかった。
そして思っていた。清明はきっと最後まで話していない。自分の感情や思いの最後の部分を自分に伝えていない。何故かそれは確信に近かった。
そう思うと居ても立ってもいられなくて、夜中だと分かっていたが清明の部屋の前まで来ていた。特攻に旅立っていったパイロットが多かったせいで、清明は今、部屋に独りだった。
灯りが漏れているので多分清明は起きている。凛はドアをノックすると少しだけ開けた。
あの草むらで泣きながら、ずっとずっと考えていた。清明が過去を告白したのはきっと自分にだけだ。だから自分がどう思ったのかを、偽りなく伝えたい、そうしなければと思った。
「清明さん、あのね俺、清明さんが復讐したいと思ったの普通だと思うんだ」
ガタンと中で音がした。椅子から立ち上がる音。
「家族がそんな風になってそう思わない方がおかしいって言うか、俺もきっとそう思うから」
本心だった。大事な家族を傷つけられてそう思わないでいられる方がおかしい。
「でも…清明さんは結局しなかったんでしょ?俺はその先が知りたいよ。清明さんが今までどう生きてきたのか、知りたい」
祈るような凛の言葉。
すっとドアが引かれた。
小さな灯りがともる部屋、目の前に清明が立っている。自分より随分背の高い清明を凛が見上げる。
清明は凛の手を引くと、ぎゅっとその身体を抱きしめた。凛は少し驚いたが、
「ね、教えて清明さん」
そう言って清明を抱き返した。
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