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終章-1
広島と長崎に新型爆弾が落ちて、清明の特攻出撃の日が早まった。予定では八月十五日のはずだったが、三日前倒しされた。
整備の手を抜けば敵まで辿り着けずどこかに不時着するのではないか?そんなことさえ凛は考えた。しかしそれで生還しても、きっとまた命令は下る。清明ほどのパイロットを特攻に任命するということは、もうそのくらい戦局は悪化しているということなのだ。
清めるように酒を飲み干し、その盃を割る。
見送る誰の目にも涙が浮かんだ。
清明はいつものように機体に両手を着いた。祈るように目を閉じる。
『凛』だ。
凛はそう思った。美しくて、悲しい『凛』。
晴天の青に白いマフラーが翻る。
清明の目が凛を探した。目が合って、清明が微笑む。
今から死にに行くとは思えない、清々しささえ纏った瞳。
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