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【1日目】ホテルで作戦会議
「ふ~ん、じゃあ前回は映画村に行ってないんだ?」
今回の宿泊先は、地下鉄烏丸線の北の終点駅からすぐのホテルだった。
午後に到着し、チェックインを済ませた羽小敏 、包文維 、唐煜瑾 3人を前に、一旦実家に戻って、自分の車でホテルにやって来た百瀬茉莎実 が、前回の旅のスケジュールを確認していた。
「映画村?」
煜瑾は好奇心いっぱいの黒瞳をキラキラさせている。その隣で、このホテルのカフェで人気のケーキを頬張る小敏と、香りのよいコーヒーを味わう文維がいる。
ここは、茉莎実の実家から一番近いホテルだった。朝食と、カフェで売っているパンが美味しいことで、茉莎実が小敏に激推ししたのだった。
ちょうど時刻はオヤツの時間で、煜瑾と茉莎実は豪華なイチゴパフェを堪能していた。
「時代劇とか、特撮とかの撮影をしてる、テーマパークみたいなものかな?」
大きく、甘いイチゴを頬張りながら、茉莎実が説明した。
煜瑾も濃厚なイチゴアイスを口に運びながら、何度も頷いている。
「日本の昔のキモノとか着て、写真撮れるんだよ」
実は日本の特撮も大好きな小敏が、楽しそうに付け加えた。
それから小敏は、茉莎実の方を見てニヤリとした。その意を汲んだのか、茉莎実もクスクスと笑い出す。
「煜瑾なら、お姫様の衣装でも似合うかも」
「え?」
茉莎実と小敏とにからかわれていることに気付かず、煜瑾はキョトンとした。そんな煜瑾に優しくほほ笑みかけ、文維は冗談めかして前に座る2人を睨んだ。
「煜瑾で遊ばないで下さいね」
「ゴメンなさ~い」
茉莎実は肩を竦めて、小敏は舌を出して、素直でカワイイ煜瑾をからかうことをやめた。
「とにかく、今回は茉莎実ちゃんのおススメの場所に観光に行って、美味しい物を食べよう!」
小敏がそう言うと、煜瑾はまた笑顔に戻った。
「よろしくお願いします」
「メジャーな観光地じゃなくて、私の趣味でいいなら」
そう言いながら呑気な顔をして、茉莎実は大らかに笑った。
「まずは、今夜の晩御飯は?」
小敏が身を乗り出すようにして茉莎実に訊ねる。
「ん~初日だし、近所でいい?」
茉莎実がちょっと考えながら言うと、イケメン3人組は黙って頷いた。
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