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【1日目】一日の終わりに

 煜瑾は流れてくるお寿司に夢中になりながら、小敏が好きなように注文した季節の天麩羅や伊勢海老以外のお刺身や、一品料理を少しずつ味わい、大いに満足した。  当然、煜瑾が満足すれば、文維も小敏も文句なしだ。 「ごちそうさま~」  高そうな金色のお皿をいっぱい並べ、注文したことも無いような一品料理も好きなだけ食べて、ホクホクしながら茉莎実は、会計を終えた文維にお礼を言った。 「文維、ありがとうございます。とっても美味しかったです」  煜瑾もにこやかに言うと、文維も嬉しそうだ。  回転寿司店を出ると、小敏がキョロキョロした。 「ねえ、ホテルに戻る前にコンビニに行こうよ」 「コンビニ?」  茉莎実は愛車の軽自動車のドアを開けかけていたのだが、小敏のリクエストに振り返った。 「どこがいい?セブンイレブン、ミニストップ、ローソン、いろいろあるけど」 「任せる」  小敏からの依頼に、答えて、茉莎実の軽自動車は近くのコンビニへと向かった。 「飲物でも買って行きましょうか」 「はい」  日本のコンビニにも興味がある煜瑾のために、文維は優しく誘った。  店内ではすでに小敏が、アイスやお菓子、ジュースなど次々カゴに入れている。 「コレ、いる?」  茉莎実が小敏を冷やかすように、お酒のおつまみコーナーで「イカくん」の袋を取り上げた。 「お、悪く無いね~。ビールだけでなく、ハイボール缶も買おうっと」 「飲み過ぎてはダメだぞ、小敏」  浮かれている小敏に、子供の頃からお目付け役である文維が注意する。 「今回は同じ部屋だから、何かあっても文維がいれば大丈夫ですよ」  優しい煜瑾が、そう言って親友を庇うと、文維だけでなく小敏までも苦笑した。  今回も、茉莎実が勧めるホテルに宿泊すると決まった途端に、弟の煜瑾を溺愛する唐煜瓔が最上スイートルームを予約してくれたのだった。  8階にあるクラブグランドスイートルームには寝室が2つあり、キングサイズのベッドがある寝室には文維と煜瑾が、ダブルベッドのツインの寝室には小敏が泊まることになっていた。 「そうだね~、クラブルームなんだから、クラブラウンジ使えるんだよね。飲物とか軽食とかあるかなあ」  そんなことを言って、ウキウキしながらも、結局カゴにいっぱい入った商品を減らすことなくレジへと向かった。

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