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【1日目】おやすみなさい
「じゃあ、明日は8時にお迎えにくるからね~」
ホテルの前まで小さな車で送ってきた茉莎実は、そう言って3人を降ろし、ノロノロと安全運転で、実家に帰って行った。
「8時出発なら、朝食は7時半かな?」
8階の自分たちのスイートルームに向かいながら小敏が提案すると、文維と煜瑾は顔を見合わせてから頷いた。
「クラブルームだからラウンジの朝食も、メインダイニングの朝食も選べるんだって。茉莎実ちゃんは、メインダイニングの和定食は、一度は食べたほうがイイって言ってたよ」
「和定食ですか?」
前回の京都旅行で、ホテルの朝食ですら上海の日本料理とは違うことに気付き、すっかり本格的な和食がお気に入りの煜瑾だった。
「茉莎実さんおススメの朝ご飯なら、ゆっくり味わいたいです。明日の朝は日本時間の7時からメインダイニングで朝ご飯ですね」
あの大人しく、自己主張が苦手な煜瑾とは思えぬほど、テキパキと決めてしまった。
そんな様子に、文維と小敏は顔を見合わせて笑った。
「煜瑾も成長したね~」
「おかげさまで」
「もう、からかわないでください!」
ニヤニヤする文維と小敏に、煜瑾はくすぐったそうに笑いながら、形の良い唇をプイっと尖らせた。
自分たちの客室に戻ると、文維のカードキーで3人は部屋に入った。
入ってすぐの部屋はリビングで、居心地の良いソファや大型テレビがある。小敏は急いでそこにある冷蔵庫に先ほどのコンビニで買ったアイスや飲み物をぎゅうぎゅうと詰め込んだ。
「明日は、映画村だよ。楽しみだね~。早くお風呂に入って、軽く飲んで寝よう!」
小敏はそう言いながら、リビングの隣の、10人掛けの大きなダイニングテーブルのある部屋を通り抜け、自分のベッドルームに向かった。
それを見送り、文維と煜瑾は呆れたように笑った。
2人は並んで、小敏とは反対方向に向かう。こちらは2人だけの寝室だ。
文維と煜瑾は2人きりになって、見つめ合い、はにかむように微笑んだ。
「一緒に、お風呂に入りましょうか」
文維の誘いを、煜瑾は恥ずかしそうにしながら頷いた。
「小敏のバスルームまで聞こえるような、私が困るようなことはしないでくださいね」
煜瑾らしい高貴で、ユーモアたっぷりの笑顔と言い方に、ワルいことを考えていたらしい文維は、ハッとした顔になり、すぐに楽しそうに2人で一緒に笑いながらバスルームに消えた。
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