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【2日目】初めてのメイク
「どういうことですか、小敏?」
何事かとオロオロしている煜瑾の背中を押して、着替えを勧めた。
それは日本の浴衣で、文維や煜瑾は1人では着られない。
「まずはボクの真似をしてね」
そう言いながらも、小敏もたどたどしい。
〈お手伝いしましょうか〉
カーテンの向こうから声が掛かった。着付け係の担当者らしい。これ幸いと小敏も返事をした。
〈ぜひお願いします〉
これで3人もなんとか様になり、更衣室からメイク室へと移動した。
「遅かったね」
鏡の前でそう言った茉莎実は、すでにメイクを始めていた。
〈ええっと、じゃあメイクをさせていただきますね〉
メイクの担当者が予約票を確認しながら声を掛けた。
〈まずは、「お殿様」は?〉
〈ああ、この人〉
そう言って小敏は、文維の背中を押した。
「え?なに?」
さすがにいつも冷静な文維も動揺する。
「イイから、イイから」
体よく小敏にあしらわれ、言われるがままに、文維は鏡の前に座らされた。
〈で、ボクはこのお奉行さまで、もう1つは彼です〉
メイク担当者は、小敏の紹介に、煜瑾を見てニッコリとした。
〈ピッタリですね〉
〈でしょう?〉
意味ありげな小敏の笑いに、煜瑾は何かがスッキリしなかったが、文維と同じく訳が分からぬうちに化粧台に座らされた。
「もしかして、私たち、お化粧されるのですか?」
怯えたように煜瑾が言った。
「そりゃ、お化粧なんかしなくても、煜瑾はキレイだよ。でもね、これは撮影用なんだから、黙って任せなさい」
小敏にそう言われて、煜瑾は困ったように文維の方を見るが、文維も困ったように笑いながらも、(小敏の言う通りに…)とでも言いたげに頷いた。
「……」
なんとなく納得のいかないまま、煜瑾はギュッと目を瞑って顔に何かを塗られることを我慢した。
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