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【2日目】それぞれの衣装

 あっと言う間に化粧を済ませ、カツラをセットされ、人形のように立っているだけでテキパキと着付けをされ、4人はすっかり日本の時代劇の登場人物になった。 「どう?カワイイでしょ?」  キレイに着付けられた茉莎実が、自慢げに3人に見せびらかした。 「カワイイです!これは何という衣装ですか?あとで一緒に写真を撮りましょうね」  大喜びの煜瑾に、茉莎実も嬉しそうに煜瑾の手を取った。 「煜瑾だって、とってもカワイイ」 「ん?」  だが、その言葉に煜瑾は何か引っかかるものを感じる。 「わ~、文維先生の『お殿様』、やっぱり似合う~!カッコイイ!『お殿様』そのまんまって感じ。小敏の『お奉行様』も、笑えるけど、イイよ~」 「ボク、一度でいいから〈カミシモ〉っていうの着てみたかったんだ~」  煜瑾から見ても、文維も小敏も髪型は妙な感じだが、着物の色も渋く落ち着いていて、確かにカッコイイ。  だが、なぜか自分だけは「カワイイ」という評価なのが気になった。茉莎実だけでなく、メイクさんも、床山さんも、衣装さんも、みんな煜瑾のことを「カワイイ」と言っていたのが、それが日本語であっても煜瑾には分かった。 「次はプロのカメラマンさんが写真を撮ってくれるんだよ。その後は、1時間この格好で映画村内を見学できるの」 「写真、撮りまくろうよ」  茉莎実と小敏は張り切っているが、文維はなんとなく慣れない衣装に歩きにくそうにしている。そして煜瑾は1人難しい顔をしていた。 〈撮影はコチラです〉  流れるような案内で、撮影スタジオの方に向かった一同だが、煜瑾は、ふと壁に貼られたポスターに気付いた。それは、扮装衣装の見本が並ぶポスターだった。 「あれ?」  煜瑾は、上から順番に茉莎実の衣装を探し、それが「町娘」の衣装だと分かった。文維のは「お殿様」そして、小敏はずっと下の方にある「お奉行様」の衣装だ。  では自分は…ともう一度上から目で追って、どうやら上に着ている着物の色や柄が少し違うようだったが、これだろうというのを見つけた。  それは「振袖若衆」と書かれた扮装だったが、煜瑾は違和感を覚えた。

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