17 / 30

【2日目】最恐のアトラクション

 午後からは、オープンセットの「日本橋」で水戸黄門ご一行と出会い、一緒に写真を撮ったのを始めとして、吉原通りで花魁と、長屋で浪人や銭形の親分と写真を撮って、大はしゃぎだった。  そのままの楽しい勢いで、迷路や忍者屋敷やトリックアート館などで体を動かして、たっぷりと楽しんだ。 「こ、ココはダメ…」  次はココに行こうと言い出した小敏を前に、茉莎実は後ずさった。 「なんで、なんで~?」  いかにも楽しそうに、その建物に入ろうとして手を引っ張る小敏に、茉莎実は(がん)として動こうとしない。 「どうしたのですか?ここは何のアトラクションですか?」  茉莎実の(かたく)なな態度を不思議に思った煜瑾が、優しく声を掛ける。 「ココの怖さを舐めちゃダメだってば~」  泣きそうな茉莎実をよそに、小敏が期待しているその場所とは、映画村ならではのお化け屋敷だった。 「こういう本格的なお化け屋敷って、上海にはないんだから、入りたいよ~」  ちょっとカワイイ顔立ちだからと、幼い様子でゴネて見せる小悪魔の小敏に、いつもなら「仕方ないな~」と丸め込まれてしまう茉莎実だったが、このお化け屋敷だけは譲れないようだった。 「ココのお化けは本格的で、作り物とか機械仕掛けとかじゃないの!本物の俳優さんが、本気で怖がらせにくるから、メッチャ怖いの!とてつもなく容赦ないの!」  かつてよほど恐ろしい目に遭ったのか、茉莎実は震えながら拒絶するが、小敏の期待はますます高まってしまう。 「うわ~スゴイね~ぜひ入ってみたいよ~」 「勝手に行きなさいよ~」  突き放すような茉莎実に、拗ねたように小敏が言った。 「じゃあ、茉莎実ちゃん1人で待ってるの?」 「は?」  茉莎実が驚いて、文維と煜瑾を振り返ると、2人は平然としている。 「え?煜瑾も、こんな怖いお化け屋敷に入るの?大丈夫なの?」  目を見張るようにして驚いた茉莎実の問いに、煜瑾は明るく澄んだ目で答えた。 「大丈夫って、何がですか?」  無邪気に問い返す煜瑾に、茉莎実はビックリする。 「煜瑾って、お化け大丈夫な人なの?」 「ふふふ。お化けなんて、本当にいるわけありません。小敏が言う通り、上海にはこういうアトラクションというのは少ないですからね、ぜひ試してみたいです」  意外と、最恐のお化け屋敷に興味津々の中国人イケメン3人組に、引きまくった茉莎実だった。

ともだちにシェアしよう!