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【2日目】世界遺産「二条城」

「御殿の中っていうのも、綺麗なんだろう?」  小敏が聞くと、茉莎実より早く、煜瑾が答えた。 「もちろんですよ!たくさんの障壁画のレプリカが飾られていて、とても美しいのです」 「その通り。昔の豪華さが感じられるようなレプリカで、それはもう雅やかなの。で、最後に修復された本物が見られるってわけ。煜瑾、本当によく勉強してきたわね~」  しっかり予習し、楽しみにしている煜瑾に、茉莎実も感心している。  褒められた煜瑾は、はにかみながら、それでも謙虚さと清純さを忘れない笑みを浮かべた。 「それだけ楽しみにしてたのなら、先に言ってくれたらよかったのに」  小敏は、自分に頼ってくれなかった煜瑾を、ちょっと恨めしそうに見て言った。 「小敏、ゴメンなさい。でも他にも行きたい所がたくさんあって、決められなかったのです…」 「それでも、さ」  小敏がブツブツ言う間に、4人は重要文化財の唐門の前にやって来た。 「わ~キレイね~。10年位前に修復工事をしたそうなんだけど、その後来てないから、私もこんなにキレイなの初めて見た~」  京都市内だけでも、国宝や重要文化財はあちこちにあるが、地元の京都人は実際に見に行くことは少ない。小中学生の頃に社会見学として行けばいい方で、余りにも身近にあり過ぎて、「いつでも行ける」と油断をしているのだ。茉莎実も地元民としてご多分に漏れない。 「屋根が立派だね~」 「蘇州にある庭園の建物に似ていますよね」  小敏と文維でさえ、その美しく彩られた門に感心している。 「彫刻が素晴らしいですね。日本には珍しい極彩色の彫刻だなんて、文化や歴史や美意識まで、中国と日本は繋がっているっていう感じがして、とても感動します」  煜瑾は夢見るようにうっとりと見つめ、豪華絢爛な彫刻が美しい唐門を目に焼き付けるようにしていた。 「あそこに、鶴がいるのとか、唐獅子がいるの、分かる?」  茉莎実は、ありったけの知識を振り絞り、小敏と文維に説明をした。  しばらくして、充分に堪能したらしい煜瑾が、溜息をついた。 「あ、ゴメンなさい。あまりに精巧で華やかで、見とれてしまいました。時間を取って申し訳ありません」  我に返った煜瑾が、恥ずかしそうに頬を染めて3人を振り返った。 「いいんだよ。煜瑾が楽しむために来てるんだから」 「私も百瀬さんの説明でよく分かりました」  小敏と文維に慰められて、煜瑾は照れながら茉莎実に微笑んだ。 「お待たせしました。中へ入りましょう」 笑顔の4人は、キョロキョロしながら、二の丸御殿の方へとゆっくり歩いて行った。

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