22 / 30

【2日目】休憩所でのお楽しみ

「あのさ~、ボク、出来たらコッチに行きたいな~」  お得意の人タラシの笑顔と声で、小敏が見せたスマホの画面に、茉莎実も息を呑んだ。 〈何なん!今、こんなんなってるの?〉  思わず母国語に戻った茉莎実の悲鳴のような声に、文維と煜瑾も驚いて同じ画像を覗き込んだ。 「わ~キレイ」  美味しそうなワッフルコーンのソフトクリームを、狩野派をイメージしたのか金箔でコーティングした不思議なデザートがそこにはあった。 「じゃあ、今日のオヤツは休憩所のカフェにしようか。お土産も買えるしね」 「お土産?」  煜瑾が嬉しそうに茉莎実の顔を見る。 「おススメは、二条城ガチャガチャだって」  純真な煜瑾に優しくそう言うと、茉莎実は興味を持ったらしい小敏にも振り返った。 「すぐに行こう!」  日本庭園に興味の無い小敏は、そう言って1人でサッサと庭園を抜けて行った。 「小敏に風情を求めるのは無駄なようですね」  そう文維が苦笑すると、誘われるように煜瑾も可憐に微笑んだ。 「こういうの、日本では『花より団子』ていうんだよ。桜を見に行って食べ物ばかりに夢中な、無粋な人をからかうの」  茉莎実の説明に、まさに我が意を得たりというように文維が頷いた。煜瑾も一緒に笑っていたが、ふと気付いて改めて本丸御殿の庭園を見回した。 「このお城も、4月だったら桜が満開でもっと華やかだったことでしょうね」  先ほどの二の丸御殿の黒書院にあった満開の桜の障壁画を思い浮かべ、フッと夢見るように目を細めて煜瑾が言った。 「そうね。でも、その頃って観光客も多くて落ち着いて見られないし、私はこういう新緑の方がこういう庭園には合うと思うな」 「もちろん、この新緑のお庭も見事だと思います」  煜瑾はそう言って頷き、クスリと笑って、言葉を続けた。 「それに、京都には桜の名所がたくさんありますしね」  しっかりと勉強しているらしい煜瑾に、文維も茉莎実も温かく見守る。 「いつか、桜の時期に来ましょう、煜瑾」  文維がそう言うと、煜瑾は目を輝かせた。

ともだちにシェアしよう!